ABEMA決算、黒字転換が射程に入るも見通し慎重。

ABEMAを運営するサイバーエージェントが2023年9月期の通期決算を発表しました。「ウマ娘」の失速により大幅減益となったことが大きく報じられる一方、ABEMAを含むメディア事業については赤字幅を徐々に減らしており、来年度には黒字転換も視野に入っています。

第1四半期はFIFAワールドカップの放映権獲得にともなう大型投資により93億円の赤字を記録しましたが、第4四半期には赤字が0.6億円にまで縮小しました。

この話は何度も繰り返しますが、数字を見る限りワールドカップへの投資は100億円程度の規模です。一部の報道で放映権料が200億円というものがありましたが、さすがにそれはあり得ない話であり、80億円前後ではないかと推定されています。

売上の内訳をみると、広告については昨年よりも伸びていることが分かります。ただ、それ以上に伸びているのが「周辺事業」で、その多くがWINTICKETによるものです。やはり、月額課金(ABEMAプレミアム)の売上が伸びていかないと、安定基調とはなりません。

WAU(Weekly Active User=1週間ののべ視聴数)の推移でも、右肩上がりの推移となっています。ここ2か月程度は低くなっていますが、昨年の同時期よりは高い水準です。

ただ、ワールドカップによる種まき効果は徐々に薄くなっているとも考えられ、もう一段階のテコ入れが求められるところです。常時2,000万WAUをキープできるようになれば、黒字化のめどが立ってくるのではないかと。

数字上では黒字転換が近づいているように見えますが、2024年度の業績見通しによると、ABEMAは「投資期を経て赤字縮小局面に」という慎重な表記で、明確に黒字転換を謳ってはいません。また大きな玉を仕込んでいるのかもしれません。それがスポーツになるのかは分かりませんが。