インド、クリケット界に崩壊危機? 原因は"オンカジ"禁止
インドのJioStarは、2027年まで結んでいるICC(国際クリケット評議会)との放映権契約を、2年残して今年末で解約する意向とのこと。
2024年からの4年契約で、総額は30億ドル(約4,700億円)と推定されています。ICCは代わりを探す方針ですが、減額は必至の情勢です。インドからの放映権料はICCの財政の大きな割合を占めており、大きな打撃となります。
インドにおけるクリケットの放映権事情は以前まとめた記事をご参照いただければと思いますが、ディズニー傘下の「スター・インディア」と、地元財閥系の「Viacom18」の2社が争っていました。
しかし、ディズニーの経営不振によるインドでの事業が見直しに。一時は撤退も検討されました。ICCにも放映権料の減額を交渉していたとのことですが、うまくいきません。そして出された結論はViacom18との合併だったのです。そうしてできた新会社がJioStarということになります。ICCにとって今回の件は、とばっちりに次ぐとばっちりと言ったところでしょうか。
インドでは今年8月に「リアルマネーゲーム」(以下RMG)が禁止されました。オンラインゲームの結果によって賞金が得られるというものです。インドではギャンブルが禁止されていますが、RMGはギャンブルではないという理屈でこれまで運営されてきました。ゲームで勝つには技術(スキル)が必要なのだから、運だけのギャンブルとは違うというのです。
そして「ファンタジースポーツ」もRMGとして提供されてきました。実在するスポーツ選手のカードを組み合わせて架空のチームを作り、実際の成績によってポイントを得られる仕組みです。これもまた運ではなくスキルだというのですね。実際、インドの裁判所ではこれを認める判決が出たこともあるそうですが、政府はこれを覆しました。
ということで、インドのクリケット界全体が大打撃です。RMGの運営業者は選手の肖像権にお金を払いますし、チームのスポンサーになるなど多額の広告宣伝費を支払っています。
JioStarも当然ながら広告費を受け取っています。JioStarは有料放送局ですが、いくらインドの人口が多いからといっても、まだまだ経済は発展途上であり、視聴料金だけで運営できるわけではありません。
ICCは競合であるソニー・ピクチャーズやNetflix、Amazonとも交渉しているとのことですが、どこも事情は同じです。グローバル企業であるNetflixもAmazonも、いまや広告収入を重視する方向に舵を切っています。放映権料をつり上げてきた自分たちのせいだろう、と皮肉のひとつも言いたくなりますが・・・
現在、RMG禁止法案はインドの最高裁判所の審理が進んでおり、一部のゲームについては禁止が撤回される可能性も残されているそうですが、「運」と「スキル」の境界線を定義するのは簡単なことではありません。そして、スキルのゲームだと認められたとしても、すでに顕在化している依存症などの社会問題が消えるわけではありません。
ただ、いきなりの全面禁止は副作用が大きいです。かつての「禁酒法」の例をあげるまでもなく、アングラ化が進み、地下経済を肥やすことになります。適度な規制が求められます。そして、この事例はスポーツベッティングの合法化を検討している日本にとってもよく注視する必要があります。
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