専門化が進む実況アナと今後の苦難。

コパ・アメリカの日本代表戦をDAZNが配信したことの意義のひとつとして、サッカーを主戦場とする方たちのコメンタリーが一般層に触れたことがあげられる。
Twitterの感想を読む限りではおおむね好評の声が多かったが、違和感を持った人も一定数おり、実況の持つ役割についていろいろと考えさせられる。

地上波やBSであれば、テレビ局の社員アナウンサーが実況を担当するが、DAZNなどの有料メディアではフリーアナウンサーが担当する。多くの方が得意な競技を持ち、3つ以上の競技を担当するマルチなアナウンサーは少なくなっている。

また、最近ではNHKのメジャーリーグ中継に元フジテレビの吉田伸男アナが登場するという出来事も起きた。

実況の仕事の需要自体が増えるのはよいが、求められるクオリティも高くなると、特定の競技に特化したアナウンサーが求められる。しかし、特化すると食べていくのは大変になる。
また、人材面ではテレビ(またはラジオ)局出身でない方が増えており、育成やキャリアプランの問題も今後出てくるだろう。いずれにしても、いまは過渡期だと言える。
また、別の問題として同時期に大会が集中すると実況者が足りなくなる。その例として先週末のモータースポーツの例をあげる。

上はDAZNが配信したF1フランスGPのコメンタリー陣。決勝では実況を置かず、解説の田中さん・小倉さんの二人体制に。フリー走行ではよくある組み合わせだが、決勝では珍しい。
また、現在はF2などを担当している市川さんがF1の予選を担当した。格闘技ではお馴染みの市川さんもモータースポーツではいわば修業中の身。残念ながらTwitterの感想では厳しい評価が多かった模様。

エース的な存在と言えるサッシャさんは金曜日のみ。それに続く存在の中島さんは登場なし。
というのは、それぞれ別のレースの仕事があったから。具体的には土曜のフォーミュラEと、土曜~日曜に開催されたニュルブルクリンク24時間が該当する。
前者はサッシャさん実況、後者はサッシャさん・中島さんともに実況に参加。
ちなみにサッシャさんは4月から「ズームインサタデー」のレギュラー出演者となっており、もうひとつの特技である自転車ロードレースの実況も含めて週末の過密スケジュールは極まるばかり。

なお、今週末開催のオーストリアGPについても、サッシャさんがスーパーGTの専属になっていることから、今回は中島さんの出番が増えている。
また、スーパーGTには解説の中野信治さんもチーム監督として参戦しているため、この二人が欠けると戦力ダウンは免れない。

これに限らず、さまざまな競技で人員配置に苦労するケースが頻出している。中には未熟な方を起用せざるを得ないケースも出てくる。
でも、チャンスを与えなければ成長もしないわけで、視聴者としては罵倒するのではなく、健全な批評精神を持って成長を見守る姿勢も求められるのではないかと。「クビにしろ!」というのは簡単だけど、それだけだとやがて誰もやらなくなるので。

それゆえに、話は戻りますがマルチな競技を実況できる汎用の実況アナウンサーの存在は大きいわけで、テレビ・ラジオ局も、そしてフリーアナウンサーの事務所も今後の育成についてよく考えて頂きたいな…と切に願う次第です。

もちろん放送・配信を行うスタッフのサポートや、解説者とのコンビネーションも実況の質を高める大きな要素です。関係者全員によるチームプレーが求められるところですね。

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