【fact】IOCの収入と分配の実績
東京五輪の開催是非については、要人からバラバラな発言が飛び出し、トランプ大統領までもが発言するまでに至り、すっかり政治問題となってしまいました。こうなると手に負えない状態です。
また、大きな権力と巨額のマネーが動くオリンピックは格好の批判対象でもあり、社会的な不安が高まる現状ではその気持ちをぶつけやすい相手です。マスメディアでもSNSでも盛り上がってしまうのは致し方ないことです。
当ブログのスタンスとしては政治からは距離を置き、開催すべきとか延期(中止)すべきといった意見を述べるつもりはありません。一刻も早い収束を望むのみで、結果として予定通りに開催できればそれは素晴らしいことでしょう。
ということで、憶測に基づくさまざまな言説が飛び交う中で、ファクトとなる情報の紹介にとどめたいと考えております。
まずはIOCが公開している資料から収入と支出について。出典は「IOC Annual Report」および「Olympic Marketing Fact File」で、どちらもIOCのWebサイトからダウンロードできます。
2013~16年の4年間、すなわち2014ソチ大会と2016リオ大会を合わせた期間となりますが、この間のIOCの収入は57億ドルです。次の4年間はさらに増えることでしょう。
その57億ドルの内訳は、73%が放映権料、18%がトップスポンサーからとなっています。73%ですから約41.6億ドルという計算になります。放映権料に多くを依存している状態が見てとれます。
そのうち米NBCは21.9億ドルで放映権料全体の約半分。ユーロスポーツ(ディスカバリー)は6.5億ユーロで2割程度。ジャパンコンソーシアムは660億円で15%程度です。この3グループで8割以上のシェアを占めています。
次に支出ですが、収入の90%がオリンピックに関わる団体へと分配されています。
まずは大会組織委員会。ソチが8.3億ドル、リオが15.3億ドル。あわせて23.6億ドルで、収入の約4割に相当します。
次が各地域のオリンピック委員会(NOC)。ソチとリオを合わせて7.4億ドル。総収入の15%程度です。
そして各競技の統括団体(IF)。ソチ・リオともにNOCと同額で、合わせて7.4億ドルです。
その他にも正式種目に採用されていない加盟団体や、オリンピック・ムーブメントを広める活動を行っている団体。また選手・コーチを支援する基金などに配分されているとのこと。
IFの分配金については一律ではなく、種目ごとにランクを付けて傾斜的に分配しています。リオ五輪ではA~Eの5段階のランクが設定されました。Aランクは陸上・水泳・体操。またEランクは近代五種と新たに正式種目に採用されたゴルフ・ラグビーでした。
日本フェンシング協会会長で国際フェンシング連盟副会長の太田雄貴さんがツイートしておりましたが、IFへの分配金はとくにマイナースポーツとされる競技にとっては大きな収入源となっています。
過度な商業主義は是正されるべきですが、スポーツの普及にはお金が必要です。オリンピックには文化的な側面もあれば、集金と分配の装置であるという側面もあるのです。
アメリカNBCの影響で、時期が秋に動かせないという議論もありますが、その放映権料をIOCから各国際連盟に分配する事で、独立経営が難しい国際連盟が運営できている実態があります。
— YUKI OTA/日本フェンシング協会 (@yuking1125) March 13, 2020
要は、オリンピックの放映権料が無ければ生き残りが難しい競技団体が多くあるという事です。
0コメント