ナイキの厚底靴、とりあえずセーフだけど…

新しい道具が登場すると規制する動きが出るのはスポーツの歴史において幾度となく繰り返されており、「またか」という印象でしかないのですが、規制するからにはそれなりの大義名分が必要な話ではあります。

世界陸連(ワールドアスレチックス)のオフィシャルパートナーはアシックスですが、その一方で来年の世界陸上はナイキ発祥の地であるオレゴン大学であり、両社を立てねばならないのが大人の事情。それゆえもともと禁止はあり得なかったとも言えます。どこに落としどころを持っていくかは大人の仕事です。
その一方で、プロトタイプを禁止して市販品に限定するという思いきった措置を打ち出しています。モータースポーツで例えればF1からツーリングカーになったようなものです。

先日の大阪国際女子マラソンでは松田瑞生選手がニューバランスのシューズで優勝しましたが、これはかつてアシックスやアディダスでも多くの選手を手がけたカリスマシューフィッター・三村氏によるもの。

このようにメーカーのサポートを受けるほうが普通なので、特定の個人をサポートせず、3万円ほど出せば誰でも購入できるようにしたナイキの手腕はすごいと言わざるを得ませんし、むしろオーダーメイドのほうを規制すべきという意見が出てもおかしくはないでしょう。

※松田選手は外反母趾を抱えていること。また新ルールでも医学的な理由によるカスタマイズは許可されていることを補足します。
エリートの世界はそれでいいとしても、今度はアマチュアの世界はそれでいいのか、という話もあります。市販品とはいえ、やはり3万円は高いのでは…という意見があってもおかしくない。
国によって経済力は異なりますし、日本でも高校駅伝で多数の選手がナイキを履いていたことが話題になりました。このあたりの課題は現場レベルで考えていくべきでしょう。

どうしても当ブログはスポーツを観る人の側の視点に立つことが多いのですが、スポーツはする人がいるから成り立つという基本を改めて思い出させてくれる事例です。だからビジネスも成り立つわけで。

ということで本件はいったん棚上げになるのですが、東京五輪、または来年の世界陸上が終わってから改めてくすぶり出すことが充分考えられます。
…というところで本稿を終わらせるつもりだったのですが、どうもこの規定は適用範囲があいまいで、短距離種目にも適用されるかもしれないとのこと。

そうなると桐生選手にシューズを供給しているアシックスが被害を受けることになり、単に世界陸連が混乱してるだけなんじゃないかと疑いたくもなる事態です。まだしばらく続きそうですね…

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