五輪の嫌われ者?電通・パソナにまつわる話。

国民の関心事である東京五輪ともなれば、普段はスポーツに興味もない人も加わっていろんな議論が出てくるのは当然なのですが、その中ではどうしても「分かってないな」という話も出回ってしまいます。

批判されるべき点は山ほどありますが、かと言って不正確な情報に基づく批判は冷静な議論の妨げにしかなりません。当ブログとしては、マスメディアやSNSが発する不正確な情報を検証していく姿勢です。もちろん個人の趣味ですから限界もありますが。

ということで、今回検証しておきたいのは、Twitterなどで出回っている「東京五輪が中止されると電通が倒産する」という噂です。
当ブログでも以前紹介しましたが、香港政府が東京五輪の放映権を購入したという記事がことの発端のようです。見出しにある「電通から」「中止なら払い戻し」という言葉から尾ひれがついたようですね。

当然中止なら電通が払い戻しを行いますが、それと同時に電通もIOCから払い戻しを受けるわけです。ですから、電通が大きな損害を被ることはない…という単純な話です。

また、電通は香港を含む22の国・地域で放映権を販売していますが、それらすべての金額を足しても全世界でみればわずかな比率です。それよりも日本一国のほうがはるかに巨額であり、アジアを気にするよりも日本国内を心配すべきでしょう。景気が冷え込み、広告収入が落ち込めばそちらのほうが大きな打撃です。
もう一点、この噂を補強させてしまったのが電通が自社ビルを売却する方針を発表していることです。売却後、同じビルにテナントとして入居することになっているので、オフィスを移転するといった話ではありません。

これは資金調達の手段としてよく使われる方法です。また、コロナ禍でリモートワークが促進されたことにより、従来よりも必要なオフィス面積は小さくなっています。それゆえ、ビルを所有し続けるよりも身軽になるほうを選んだというわけですね。
東京五輪のオフィシャルパートナーであり、人材サービスを提供するパソナについても簡単に触れておきます。竹中平蔵氏が会長を務めていることからネットではえらく叩かれておりますが…

東京五輪では1業種1社の枠組みは外されており、人材サービスはパソナとリクルートの2社が名を連ねていることにまず触れておきます。新聞社がこぞって名を連ねていることと同じです。なので、パソナだけが優遇されているといった記述には疑問を感じます。
パソナに向かう批判としては「儲けすぎ」というものがありますが、これも単純に受け止めていい話ではありません。東京五輪のスポンサーには、VIK(Value in Kind)と呼ばれるいわゆる現物支給の仕組みがあるからです。

つまり、パソナは組織委員会に対して人材サービスを提供しており、組織委員会が支払う経費と相殺されているわけです。もちろん、その価格設定が適正かどうかは厳しい目で見る必要がありますが、少なくともパソナだけが丸儲けという構図でみるのは単純すぎるのです。

このVIKだけでなく、オリンピックの帳簿を複雑にしている要素はいろいろとあるのですが、それらについても折に触れて書いていくかもしれません。

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