DAZN、BT買収失敗の陰に13年前の悪夢。

既報の通り、DAZNによる英BT Sportの買収交渉はディスカバリーに横からさらわれる形で失敗に終わりました。昨年からずっと噂されていただけに、越年した段階で暗雲が漂っていた感があります。

なぜ失敗したのか。もちろん関係者が具体的な理由を述べることはないのですが、やはり新興企業であるDAZNへの信頼感かネックとなったように思われます。財政面もそうですし、BTからプレミアや欧州CLなどの大型コンテンツを引き継ぐ以上、サービスの品質も問われます。

DAZNがBTを狙ったのはやはりプレミアの放映権が大きいでしょう。本来ならば昨年行われるはずだったプレミアの次期放映権の入札ですが、コロナ禍によるバブル崩壊を恐れたリーグは入札を行わず、現在権利を持つSky・BT・Amazonに引き続き付与することを決定しました。

DAZNには世界のスポーツ放映権市場におけるキープレイヤーとして名乗りをあげ、ロンドン市場に株式を上場する計画がありました。今回の件によってその計画は大きな見直しを強いられることになります。
プレミアリーグがSkyのバックアップによって創設されたことは知られています。放映権の入札が始まった2006年にSkyの独占を崩したのは、アイルランドのSetanta Sportという放送局でした。

しかし、Setantaは入札金額に見合った契約数を集めることができず、2009年には未払いを起こします。プレミアの放映権を剥奪され、わずか3年でSetantaは放送停止となりました。この13年前の出来事はいまでも大きな傷痕として残っています。
実はSetantaの危機に際してスポンサーとして名乗りをあげたのが、DAZNの親会社であるAccess Industriesでした。もしこの交渉が成立していたら歴史は大きく変わっていたかもしれません。そして、DAZNは13年前の呪いを解けなかったと言えます。

まぁ、個人的にはプレミアの放映権がそこまで価値のあるものなのかが理解できません。イギリスの企業だからイギリスの放映権、という理屈は分かっても、やはり値段が高すぎます。

プレミアを観るためにはSkyとBTのセットで月額65ポンド。さらにスポットでAmazonプライム(7.99ポンド)の契約が必要です。それでも全380試合のうち生中継されるのは200試合なのです。
当然ディスカバリーにとっても高額な買い物になるのですが、ディスカバリーはAT&Tからワーナーメディアを分離して統合しており、スポーツに限らず総合エンターテインメント企業としてコンテンツを集めています。

BTからBT Sportを分離するのもその一環なわけで、そう考えるとスポーツ専業のDAZNにとっては最初から勝ち目の薄い戦いだったのかもしれません。

DAZNはこれを機に身の丈に合った経営を目指したほうがよいのかもしれませんが、ベンチャー企業が失速すると流れが一気に逆流しかねません。果たしてソフトランディングは可能なのでしょうか。

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