バルサ「第2のレバー」発動で再び資金調達 & 2006年のレアル

6月にアメリカの投資会社・Sixth Streetからの投資を受け入れたバルセロナ。この際の条件はラ・リーガから分配される放映権料の10%を、25年間に渡って支払い続ける代わりに2億750万ユーロを受け取るというものでしたが、ソシオの総会で承認された枠は25%であり、残り15%の売却先を探していました。

その相手先が決まり、結局は6月と同じSixth Streetに決定しました。金額は3億2000万ユーロと推定されています。2件を合計すると、5億2,750万ユーロということになります。なお、金額はメディアによって揺れがありますのでご参考程度に。

Sixth Streetに支払われる金額は現時点で年4,140万ユーロと推定されており、25年間の総額は10億3,500万ユーロです。ですから、差し引き5億ユーロ程度のお金を25年間という時間と交換したと考えることができます。

スキームとしては投資なのですが、やっていることは借金とほぼ変わりありません。年利で換算すると7.8%程度になるでしょうか。もちろん放映権料が今後も変わらないということはありません。ラ・リーガの人気が拡大すれば増えるでしょうし、逆に縮小すれば下がることになります。そういったリスクも込みで、この取引の損得は判断されることになります。買い戻しオプションも付加されているとのことなので、そんなに低くは設定されないでしょうね。

対象となる放映権はラ・リーガのみなので、欧州CL/ELの分は含まれないのですが、裏を返せばCLの放映権料は引き続きそのまま受け取れます。今後25年間にわたって常勝軍団であることが義務付けられたとも言えますし、それゆえ補強も手を抜けません。もしCLはおろかELにも出場できなくなれば、丸ごと沈んでいきます。もっとも、これはビッグクラブに共通する綱渡りなのですが。

この取引は「第二の財務的レバー」(second financial lever)と呼ばれているそうです。第三のレバーも準備されていて、これも先日ソシオの承認を受けた子会社・BLMの株式売却となります。これも近いうちに相手が発表されることになるでしょう。

話を昨年に戻すと、ラ・リーガはCVCキャピタル・パートナーズからおよそ20億ユーロの資金を調達しています。その代わりに放映権料の約11%を50年間にわたって提供することとなっています。この枠組みにはバルサ・レアル・ビルバオなどが反対したため、当初予定の金額よりも減少することになりました。これらのクラブには資金の分配はありません。

11%×50年か、それとも25%×25年か。バルサはラ・リーガが作った枠組みに乗るのではなく、自ら資金調達する道を選んだわけですが、その先にはラ・リーガそのものに今後50年縛られたくないというビッグクラブの強い自負が感じられます。

ということで、放映権料をもとにした資金調達を行っていないのはレアルとビルバオということになるのですが、レアルも過去に放映権を売却していたではないか、という記事が日刊スポーツに掲載されていました。でも、この記事ってなんか変なのです。

というのも、ラ・リーガの放映権がリーグ一括管理になったのは2016-17シーズンからであり、それ以前はクラブが管理していたわけです。この記事が指摘している2006年の契約というのはMediaproが相手であり、単純にクラブが管理している放映権を販売しただけではないか…と。

Mediaproは2006年に「La Sexta」というテレビチャンネルを開設し、その目玉コンテンツとしてサッカーに着目。その年のFIFAワールドカップの放映権を獲得すると、その次にラ・リーガのクラブと次々に契約を結んでいきました。

7年契約で11億ユーロという数字が出ていますが、そもそもこの金額は一括で受け取るものではないので、今回の仕組みと比較する意味は全然ないのですよね。さらに言うと同じ年にバルサもMediaproと契約していますので、レアルを引き合いに出す意味もありません。つまり、三重の意味で「？」となります。