タイのW杯放映権問題のその後。

ワールドカップの開幕3日前になってようやく放映権契約がまとまったタイですが、その後もいろいろと混乱が続いたようです。


複雑な話なので、まず最初に登場人物を整理しておきます。

  • 放映権の購入者: SAT(タイスポーツ庁)
  • 放送・通信の管轄省庁: NBTC(国家放送通信委員会)
  • 大手通信会社: True

推定14~16億バーツとされる放映権料のうち、6億バーツは政府の資金(NBTCがSATに拠出)、残りは民間の資金で賄われることとなりました。Trueはその中で最大の3億バーツを拠出したとされています。


試合の放映権は手をあげた放送局に配分されましたが、全64試合のうち半分がTrueのグループに属するチャンネルに割り当てられたとのことです。


タイにはいわゆるユニバーサル・アクセス権的な規定があり、ワールドカップは無料放送が義務付けられています。しかし、その対象は地上波に限定されていました。そこで、Trueは地上波以外の放送についてSATと独占契約を結んだと主張。他の業者に番組を提供しなかったのです。とくにIPTVを通じて地上波の番組を観ている視聴者にとっては打撃となりました。


これに怒ったのがNBTCで、SATに対しすべてのIPTV業者に対して無料で試合を視聴できるようにすることを要求。また、拠出した6億バーツの返還を迫りました。

この争いが決着したのは12/15のこと。すでに準決勝までが終了し、残る試合は3位決定戦と決勝戦の2試合のみとなっていました。この2試合はともにTrueに割り当てられています。


結果的にTrueが折れる形となり、IPTVでも無料で視聴できることになりました。TrueはSATと新たな契約を結び、資金を追加で拠出することにしたようです。

SATが6億バーツを返還するかどうかは現時点でまだ明らかではありません。訴訟に発展する可能性も伝えられています。もし返還することになり、その分を実質的にTrueが肩代わりする形で決着するのならば、正直なところ最初からTrueがすべての放映権を買っておけばよかったのでは…と思ってしまいます。


なぜ政府の資金で購入させようとしたのか。もちろん、放映権料の高騰という背景はあるのですが、ぎりぎりまで交渉を引き延ばし、結果的に混乱を起こした責任を誰がとるのでしょうか。SATにもTrueにも、そしてFIFA側の代理店であるinfrontにも責任の一端はあるものと考えます。

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