豪Aリーグ、観客が選手襲撃で試合中止の混乱。

ワールドカップでベスト16に進出したオーストラリアですが、もう国内リーグであるAリーグは再開していました。しかし、残念な出来事が起こってしまいます。メルボルン・ビクトリーvs.メルボルン・シティ戦で観客がピッチに乱入。シティのGKを負傷させたのです。試合はそのまま中止となりました。

この事件の背景として、Aリーグが行ったある決定があります。Aリーグは12クラブが所属し、リーグ戦の後で上位6クラブによるプレーオフが開催されるのですが、そのプレーオフ決勝(グランドファイナル)について、今後3年間シドニーで開催すると発表しました。従来はシーズン上位クラブのホームで開催されていましたが、シドニーがあるニューサウスウェールズ州の観光局と3年総額1,200万豪ドルの契約を結んだのです。


昨シーズンからAリーグの放映権はViacomCBSが5年総額2億豪ドルで購入。傘下の地上波「Network Ten」で無料放送し、「Paramount+」で全試合を配信しています。また、ViacomCBSはAFC主催試合を含むオーストラリア代表戦の権利も4年総額1億ドルで購入し、まさにオーストラリアサッカーの本拠地となっています。


しかし、高額を支払った分要求も厳しかったようで、初年度のAリーグは期待したほどの加入者を生み出すことができませんでした。そのため、今季は放映権料がカットとなり、それを補填するためにグランドファイナルの開催権を売却したことになります。

この決定に反発したサポーターたちは抗議活動を決意。前日に開催されたニューカッスル・ジェッツvs.シドニーFC戦では試合開始20分でサポーターたちが退場していきました。そして、この「メルボルン・ダービー」でも同様に20分で退場する計画を立てていたとのことです。しかし、一部のサポーターが暴徒化しこの事態となりました。

「FANS > $$」というメッセージは強烈です。単なるカネの問題にとどまらず、大陸間プレーオフを突破し、ベスト16の成果を勝ち取ったオーストラリア代表に待っていた仕打ちのような感情を持っているのかもしれません。


日本だと、2ステージ制とチャンピオンシップが復活した2015~16年のことを連想させます。Jリーグの人気に陰りが見える中、地上波のゴールデンタイムで中継させることが目的でしたが、当時も相当な反発を受けました。結果的にスカパーからDAZNに放映権が移動したことで終了したのですが、ワールドカップのフィーバーをリーグの人気回復にどうつなげていくか、共通の課題を抱えていると言えます。


「DAZNのおかげで地上波の放送が減った」という意見がありますが、それは誤解だと考えます。DAZNは地上波の放映権を持っておらず、またそれ以前から放送が減っていたのは前述の通りです。地方によっては地元局で中継を行っており、この意見には地域差があるものと思われます。その一方で、DAZNのもたらした功罪はよく吟味する必要があります。


各地域で根付いているJリーグの人気と、日本代表の人気はまた別だという考え方もあるでしょう。今回の日本代表は欧州組が多く、欧州サッカーの人気もまた別なのかもしれません。しかし、これらはひとつの線でつながっています。地元のクラブで活躍した選手が、欧州に羽ばたいたり、日本代表として活躍する。この楽しみを多くの人が共有できるストーリー作りが求められます。決して今回の事件は対岸の火事ではありません。



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