2023年の国内動画サービス市場はU-NEXT躍進、DAZN失速。

調査会社のGEM Partnersは、2023年の日本国内における動画配信サービス市場に関するレポートを発行しました。レポート自体は有料ですが、そのさわりが公開されています。

2023年の市場規模は推計5,054億円で、前年から12%増となっています。まだ成長は続いているものの、昨年は値上げを実施したサービスも目立ちましたので、そろそろ飽和してきた感は否めません。


主要サービスのシェア推計についても記載されています。この数字は金額ベースなので、会員数ではないことにご注意ください。また、この金額は契約者が実際に支払ったものであり、広告収入などは含まれていないとのことです。

これを見るとやはり目立つのがU-NEXTであり、前年の12.6%から15.0%に伸ばしています。吸収する前のParaviの数字(0.9%)も加えると、15.9%という計算です。


逆にDAZNは11.4%から9.7%とシェアを落としています。金額に換算しても513億円→490億円と減少しています。値上げを実施したにも関わらず金額が減少していることは、値上げ幅以上に解約が発生していることを示唆しています。


もちろん、詳しい調査方法が表示されていませんので、この数字がどれだけ正確なものかを検証することはできません。このレポートは昨年も取り上げましたが、DAZNが公表している決算資料の数字との比較では、いささか過剰に計上されているように感じました。

ただ、この調査は毎年実施されていますので、数字の流れを時系列で比較できることの意味は大きいです。DAZNが初めて登場した2018年以降の数字を以下にまとめておきます。


(全体の市場規模推計) × (DAZNのシェア) × (DAZNの推定売上)

  • 2018年: 1,680億円×11.7%=196億円
  • 2019年: 2,158億円×11.2%=241億円
  • 2020年: 3,222億円×10.1%=325億円
  • 2021年: 3,862億円×9.8%=378億円
  • 2022年: 4,508億円×11.4%=513億円 ※月額1,925→3,000円に値上げ
  • 2023年: 5,054億円×9.7%=490億円 ※月額3,000→3,700円に値上げ


大幅な値上げを実施した2022年には金額を大きく伸ばしたものの、2023年には減少に転じたことが分かります。ただし、裏を返せば2022年は大幅な値上げによって予測の精度が落ちたのかもしれません。DAZNの決算資料では2022年のAPAC(アジア太平洋)の売上は345億円程度であり、この調査の513億円とは大きな乖離があります。

なので、上がり下がりに一喜一憂するのではなく、2021年の378億円よりは増加していることを評価すべきなのでしょうが、今年も値上げを実施したDAZNにとって、想定以上の離反が起こっているとすれば暗雲です。値下げしたとしても元の顧客はおそらく戻ってこないでしょうから、打てる手が限られてくることになります。

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