スポーツニュースの映像使用と共有のうんちく話。

先日行われたプレミアリーグ、リヴァプールvs.マンチェスター・シティ戦では遠藤航選手がプレイヤーズ・オブ・ザ・マッチを獲得しました。この活躍ぶりから、もはや恒例行事のようなものですが、日本のメディアでの報道量の少なさを嘆く声が聞こえてきます。


実際のところ、本当に報道が少なかったのかはよく分かりません。「報道ステーション」などで取り上げられたという情報も見かけましたが、具体的な数字を出せるわけでもなく、どうしても印象で語るしかありません。その結果、不毛な論争を招いてしまうのは不幸と言えます。

よく誤解されるのが、放映権料と映像使用料の混同です。プレミアリーグの放映権料の高さはよく知られるところですが、映像使用料も高いとは限りません。公開されていないので分からないのが正直なところです。


一般的なことを申し上げると、スポーツ主催者はメディアの露出を重視しており、報道目的であれば(放映権を持っていなくても)一定の条件のもとに使用できる規程を設けています。無料で使用できることも多いのです。


ただ、MLBについては日本テレビが権利を買わず写真での報道を続けていた時期もありますので、それなりの金額を取っていた可能性があります。プレミアリーグについては分かりませんが、無料もしくは安価であってほしいところ。


さて、ここで面白い資料が見つかりました。「ジャンクSPORTS」元プロデューサーの清原邦夫さんが2007年に書いた「ジャンクOB通信」というものです。どうやらガラケー向けの文章であり、カナが半角になっているので文字化けするかもしれませんがあしからず。

ここに登場するのが「スポーツニュース協会」という団体です。Webサイトとかは存在しないので実態がつかめないのですが、いわゆる記者クラブのような存在であり、NHKと民放キー局が加盟しているようです。


そして、加盟社が放送したスポーツの試合や取材の映像は協会を通じて共有されます。この映像を「分岐映像」と呼んでいます。現在はネクシオン(NEXION)という会社が持つ映像伝送サービスを通じて共有されるとのこと。

ネクシオンという会社は、実はスポーツ中継には欠かせない縁の下の力持ちといった企業です。この話はまた稿を改めて取り上げるかもしれません。


さて、分岐映像にはほとんどの場合「配信から24時間以内で、しかもニュース及び情報番組内での使用に限定」といった使用条件が付けられていると清原氏は明かしています。条件を決めるのは放映権を持つ主催者なのですが、例えば「1番組3分以内は無料」といった形で利用できることになっています。スポーツニュースにおいて、当日の試合映像が素早く報道できるのもこれが理由です。


Jリーグの映像利用規程は当ブログでも何度か紹介しましたが、今回は別の事例ということで、昨年(2023年)に開催された「全日本ブレイキン選手権」の事例が見つかりましたので以下共有します。

https://breaking.jdsf.jp/wp/wp-content/uploads/2023/02/%E7%AC%AC%EF%BC%94%E5%9B%9E%E5%85%A8%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%83%95%E3%82%99%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%AD%E3%83%B3%E9%81%B8%E6%89%8B%E6%A8%A9_%E9%96%8B%E5%82%AC%E3%81%A8%E5%8F%96%E6%9D%90%E3%81%AE%E3%81%93%E3%82%99%E6%A1%88%E5%86%85.pdf

話をプレミアに戻すと、現在放映権を持っているのはSPOTV NOWであり、プレミアの試合映像がテレビで放送される場合には「映像提供: SPOTV NOW」といったクレジットが付きます。SPOTV NOWはスポーツニュース協会には加盟していないと思われますが、上述のネクシオンなどが提供するサービスを利用することで、テレビ各局に映像を伝送する仕組みは整っているわけです。あとは条件しだいというわけですね。


「プレミアの放映権料が高いから報道されない」といった声もよく聞かれますが、結局のところ憶測にすぎません。もちろん、自社が放映権を持っているコンテンツのほうが営業的な観点も含めて使われやすいといった傾向はあるかと思いますが、ニュースバリューが高いものについては普通に放送されるでしょう。あとは限られた尺の中での相対的な比較ということになります。

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