【検証困難】大谷翔平選手の経済効果は865億円?

関西大学の宮本勝浩名誉教授によると、今年(2024年)のドジャース・大谷翔平選手がもたらす経済効果は約865億円になると試算しています。明言はされていないものの、おそらく日本国内における数字かと思われます。


宮本先生はこれまでもさまざまな経済効果を試算し、関西大学を通じて公表しています。スポーツだと最近では「阪神タイガース優勝の経済効果」なんかも試算していました。

経済効果(経済波及効果)の計算は、政府や行政機関の施策にも影響を与える重要なものであり、その計算方法も学術的に確立されたものがあるのですが、あくまでもシミュレーションであることに注意が必要です。今回のシミュレーションでも、大谷選手の今年の活躍度合いによって当然上下するわけですから、この程度の成績だったらという仮定がつきます。


残念ながら、関西大学のプレスリリースでは計算方法の詳細については書かれておらず、メディアに向けてのみ提供するという形になっているため、こちらで検証することはできません。


さて、ゲンダイの以下の記事なのですが、NHKがMLBに支払っている放映権料を125億円と推定しており、そのうちの7割に相当する87億円を大谷選手の経済効果とみなしていることが記載されています。なので、まず見出しが正しくありません。


当然ながら、この内容はメディア向けの資料を入手したうえで書いたものと思われますが、「高すぎる」と言わせたいのが見え見えです。しかし、この数字はあくまで推定なのですからこの数字を事実だとして何かしらの批判に使うべきではありません。ゲンダイからしてみれば、NHKが嫌いな人や、野球そのものが嫌いな人に対して刺さればそれでいいのでしょうが。

Wikipediaの「経済効果」の記事を読むと、以下の一文が確認できます。


マスコミは試算結果のみ報道し、計算の基になったデータや計算プロセスには関心がない。大きな経済効果はセンセーショナルに報道され、その数値が正確かどうかについて検証しない。その結果、分析結果についての社会的信用を失う恐れがある。


ゲンダイがやっていることはまさにこれだと思いますが、実はこの一文、当の宮本先生の著書『「経済効果」ってなんだろう?』が出典だと記されています。なんとも皮肉です。

ちなみに、筆者も以前勝手にシミュレーションしたことがありますが、NHKだけでなく、日本の放送局全体で126億円という結果でした。なのでNHK単独だともう少し減るという推定になります。繰り返しますが、あくまで推定にすぎません。


ちなみにNHKのほかには民放各局とJ SPORTS、そしてSPOTV NOWが放映権を購入しています(ABEMAはSPOTV NOWからのサブライセンス)。あとラジオだとニッポン放送も中継してますね。


守秘義務という壁はあるものの、公共放送たるNHKですからその支出には厳しい目が向けられて然りですし、MLBの放映権料については何かしらの形で公表されることが望ましいのは確かです。でも、正確さを欠き、単なる読者の怒りを誘うだけの記事に対してはセンセーショナリズムだと言わざるを得ません。また、それを分かっていてあえて乗っかる者たちにも問題があるでしょう。

NHKはMLB中継を年間200試合予定しており、1試合3時間とすれば生中継だけでも600時間の放送枠が埋まります。ニュースや関連番組も含めれば、1000時間近くに達しますので、そういう意味では優良なコンテンツだという見方もできます。ただ、金額も視聴率も分からない中で、そのコストパフォーマンスを問うことはできません。


民放でできることはなるべく民放に任せるべきであり、民放がきちんとビジネス化できればいいのでしょうけど、早朝~昼の時間帯は各局ともレギュラー番組の視聴習慣が固まっていることから、かえって視聴率を落とすリスクがあるのが悩ましいところです。これは時差的にアメリカ大陸で開催されるスポーツだと共通して発生するもので、今後は2026年のワールドカップや2028年のロサンゼルス五輪にもつながってきます。

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