【検証】ユーロスポーツ、パリ五輪で日本軽視?

パリ五輪閉幕後、ユーロスポーツ(Eurosport)の公式Xアカウントが投稿した画像が一部から「日本軽視ではないか」と言われているそうです。メダル獲得数上位に入った日本、ならびに中国の選手も画像に含まれていないことから、アジア軽視とも言われています。一方で同じアジアでも韓国の選手は含まれているとのこと。

https://x.com/eurosport/status/1822750807634145729


ただ、個人的にはちょっと過剰反応だと思います。ユーロスポーツが出してる画像ですから、基本的にはユーロスポーツが放送されている国が中心になるでしょう。


あと、画像にはdiscovery+のロゴも入っています。discovery+はユーロスポーツとともにWBD(ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー)の傘下にあるストリーミングサービスです。国によってはdiscovery+の中でユーロスポーツ(もしくはWBDが放映権を持つスポーツコンテンツ)の配信も行われています。

ユーロスポーツが放送されている国のリストですが、公式のものが探せていないのでWikipediaですみません。70か国以上で放送されており、韓国も含まれています。


韓国の選手は、日本でも「無課金おじさん」として話題になったトルコの射撃銀メダリスト、ユスフ・ディケチュ選手の隣にあります。トルコでも韓国でもユーロスポーツは放送されてますが、それ以上に今大会で話題になったシーンを切り取っていると考えるべきでしょう。ここはもっと深堀りしていきたいところですが、それを始めると長くなりすぎるので割愛します。


アメリカではユーロスポーツは放送されていませんが、discovery+のサービスは提供されています。HBO Maxと統合されて現在は「Max」となっています。WBDがアメリカの会社であること、次回がロサンゼルス大会であることはもちろん選ばれる理由になります。閉会式のトム・クルーズもいるみたいですね。


ユーロスポーツもdiscovery+も提供されていないと思われる国の選手もいます。セントルシアに初の金メダルをもたらした女子100mのジュリエン・アルフレッド選手の姿があります。ですから、個人的には日本選手がひとりくらいは選ばれてもいいのかな・・・という気持ちはありますが、逆を言えばユーロスポーツが放送されていても選ばれていない国もあるので、目くじらを立てるつもりはありません。

さて、ここから話をややこしくするのが当ブログの面倒なところです。ユーロスポーツが放送されている国と、ユーロスポーツでパリ五輪が放送された国は違うという話です。


ユーロスポーツの親会社であるWBDがパリ五輪の放映権を保有している国は、IOCが発行している「Marketing Media Guide」に掲載されています。基本的にはヨーロッパ諸国に限定されます。放映権は基本的に国単位で販売されており、同じユーロスポーツでも国によって放送内容は異なっているわけです。

https://stillmed.olympics.com/media/Documents/International-Olympic-Committee/IOC-Marketing-And-Broadcasting/IOC-Marketing-Media-Guide-Paris-2024.pdf

また、これらの国ではユーロスポーツでのみパリ五輪が放送されたというわけではなく、WBDが各国の公共放送などにサブライセンスを出しています。ユーロスポーツおよびdiscovery+は有料のサービスですが、サブライセンスによって無料放送を確保しています。


将来的にオリンピックがすべて有料になるのでは・・・といった見解も散見されますが、もし有料の放送局が放映権を獲得したとしても、サブライセンスが行われますので無料放送が完全になくなるという話ではありません。日本では2032年大会までジャパンコンソーシアムが放映権を確保していますので、変化があるとすれば2034年以降となります。

WBDがヨーロッパで放映権を獲得したことによる弊害はもちろんあり、サブライセンスの交渉に難航したケースがあったようです。また、無料放送の時間が縮小されればオリンピックの公共性を大いに問われることになります。WBD自身も獲得当時はディスカバリーでしたが、ワーナー・ブラザーズとの合併を経て経営方針にも変化がみられます。


2026年大会からはWBD単独ではなく、EBU(欧州放送連合)とWBDが共同でオリンピックの放映権を獲得する形に変わりました。歴史をたどると、ユーロスポーツはEBUとSkyの合弁で設立された経緯があり、めぐりめぐってEBUに戻ってくるというのは面白い話です。その裏にはオリンピック、そしてスポーツの公共性という真剣に考えるべきテーマが隠れているわけですが。

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