【追悼】ナベツネこと渡邉恒雄氏

「ナベツネ」こと読売新聞・渡邉恒雄氏が亡くなりました。今年は大物が多く亡くなった年になりましたね。


ご存知の通り、スポーツ界においてもJリーグ発足時の川淵三郎チェアマンとのバトル、そしてプロ野球では球界再編問題などで世間を騒がせたわけですが、その善し悪しはともかくとして、一本筋が通ったなんともやりにくい相手であったことは確かでしょう。

川淵三郎氏は、後に著書『黙ってられるか』(2018年)の中でナベツネ氏と対談しています。25ページ程度と決して長くはないのですが、お互い人生の晩年を迎えた中で、当時の「天敵」と対談してみたくなった。いまはJリーグの「恩人」だと思っている、と川淵氏は語っています。


最近放送された大河ドラマ「光る君へ」の最終回でも、紫式部と清少納言が晩年を迎えて語り合うシーンが描かれましたのを思い出しました。価値観は異なっても、お互い姿勢がぶれなければ、バトルの中にリスペクトが生まれるのでしょう。


「独裁者」と「独裁者」のバトル--といった形容をされましたが、ナベツネ氏は実は「独裁者」と言われて傷ついていたのだとか。かつては共産主義にかぶれていた時代もあったそうで、それゆえに権力の集中を嫌っていたのか。それでも、時代を動かす者には独裁と批判されるほどの強い権力が必要であることも充分理解していたようです。

当時少年だった筆者には分かりようがなかったことですが、野球とサッカーの文化はもともと大きく異なるものであり、交わる世界観はなかったように思われます。しかし、プロ野球は再編騒動を経て地域密着を重視するようになり、親会社に頼る経営から独立しました。Jリーグには歴史がありませんでしたが、30年が経過してクラブ数も増え、各地にサッカー文化を育んでいます。今後もお互いを研究しながら切磋琢磨していくことでしょう。

放映権に関して言えば、30年経過してもプロ野球は球団による個別管理が続いています。ただし、PLM社の設立でパ・リーグについてはインターネット配信と海外向けの権利がセット化されました。今後さらなるステップに進むことはあるのでしょうか。


Jリーグは当初から一括管理を続けてきました。発足当時は地上波全国ネットの放映権料を1,000万円に設定し、1億円以上とされる巨人戦に真っ向からケンカを売ったものです。しかし、プレミアリーグが衛星放送とともに放映権料を増加させていったのとは裏腹に、成長面では大きく後れを取ることとなりました。


企業とスポーツの関係については、ラグビーのリーグ・ワンやバレーボールのSVリーグなど、他の競技が現在進行形で課題としています。どれが正解かは分かりません。時代のニーズやビジネスの規模などから、正解はそれぞれ異なるはずです。先人が起こしたバトルによって洗い出されたさまざまな論点を引き継ぎ、当ブログもささやかながら考え続けたい所存です。合掌。

【お知らせ】現在コメント機能が使えない状態です。感想・意見・誤情報のツッコミ等ございましたら、筆者のX(旧Twitter)までお願い致します。 @flower_highway

0コメント

  • 1000 / 1000