DAZN、4年連続の値上げはあるのか。
2025年の展望としては、この話題に触れざるを得ません。月額1,925円から3,000円→3,700円→4,200円と、3連連続で値上げを行ってきたDAZNが今年どうするのか。昨年は1月11日に発表がありました。遅くともJリーグが開幕する前には判明するでしょう。
本来であれば、昨年末にもDAZNが2023年の決算を発表するとみられていたので、その数字をみたうえで考察したかったのですが、残念ながらまだ発表はされていません。2023年に単年度黒字を達成していれば理想であり、それに届かなくても2024年には黒字化の見通しがたっているものと考えたいところです。
まず、DAZNの主要市場であるヨーロッパの各国の料金を確認します。これらの国ではいずれも自国のサッカーリーグの放映権を獲得しており、以下で示す料金はサッカーを含むすべてのコンテンツが視聴できるプランです。
- ドイツ: 月額44.99ユーロ (年間契約で月29.99ユーロ)
- スペイン: 月額39.99ユーロ (年間契約で月29.99ユーロ、一括払いだと329.99ユーロ)
- イタリア: 月額39.99ユーロ (年間契約で月29.99ユーロ)
- フランス: 月額39.99ユーロ (年間契約で月29.99ユーロ)
- ※日本: 月額4,200円 (年間契約で月3,200円、一括払いだと32,000円)
1ユーロ=160円で換算すると、ドイツでは月額8,100円、他国では6,400円という水準です。年間契約するといずれも4,800円となります。
どの国でも高いという不満は出てくるのですが、とりわけ日本は世界的な物価高についていけていない状況です。それがよいのか悪いのかは人それぞれですが、少なくとも国際的に開かれたスポーツの市場においては不利に働いています。
それでも、日本のDAZNの主要コンテンツはJリーグとNPBであり、いずれも円安の影響は受けません。また、上記の国よりもJリーグの放映権料はまだ低い水準なので、相対的には低い価格を維持できているとも言えます。
昨年11月、ダイヤモンド・オンラインのインタビューに応じたDAZN Japanの笹本裕CEOは、現在の価格について以下の発言をしています。
――3年連続で値上げを実施し、Standardプランの月額料金が4200円になりました。2016年のスタート時と比較すると2倍以上になっています。値上げは受け入れられていますか。
「自信を持って受け入れていただいた」というのは傲慢だと思っています。受け入れていただいている方々もいらっしゃるでしょうし、仕方なく受け入れていらっしゃる方もいるということは理解しています。
笹本氏がCEOに就任したのは昨年2月であり、これまでの値上げの決定には関わっていません。周囲の声や個人的な感覚を総合して、価格設定に不安を抱いているようにも感じられます。
実際のところ、値上げの可能性はないとは言えません。ただ、期待を込めて50%よりは低いと考えたいところです。本社サイドとしてはもう少し上げてもよいのでは、という声が出るかもしれませんが、あとはDAZN Japan側にどこまで裁量権があるのか。そして、データとロジックをもとに本社と交渉できるかが問われることになります。
その一方で、収益構造が変化し、従来のサブスクビジネスから徐々に脱却していく可能性が考えられます。ボクシングなどのPPVもそうですし、アメフトの「NFL Game Pass」やバスケの「Courtside 1981」など、外部のストリーミングサービスをアドオンとして取り込んでいく動きが進んでいます。
NFLについては今シーズンから通常料金の会員向けに日本語コメンタリーで視聴できる試合数が増やされており、「NFL Game Pass」統合前の水準に回復しました。通常料金のレベルでファンの関心をつかみ、それでも物足りない人はGame Passへという導線を作ろうとしています。
もうひとつの動きが「DAZN Freemium」と呼ばれる無料配信です。昨年は日本代表戦も対象となりました。今年はクラブワールドカップの無料配信も決定しています。DAZN本体だけでなく、ABEMAでも一部の試合を無料配信しています。
上述の笹本氏のインタビューにもある通り、DAZNは広告売上の割合を増やしたい意向です。無料→サブスク→PPVやアドオン、という導線を構築し、それぞれのレイヤーで収益をあげていこうという戦略です。
この戦略において壁となるのは無料から有料へのハードルです。つまり、サブスクの高さが問題になるわけですから、今後はむしろ下げる方向に進むことも考えられます。サブスクはさまざまな競技を手頃な価格でまんべんなく視聴できる(ただしすべては視聴できない)サービスという扱いになり、特定の競技を全部観たい人は、競技別のアドオンを購入する形です。
そうなれば、一部で待望されている「Jリーグパック」的なものも登場する可能性が出てきます。ただ、その場合サブスクで視聴されるのは一部の試合に限られ、全部が観たい人は従来よりも高い金額が必要になる・・・といった未来も考えられます。
来年にはF1の放映権更新が控えていますが、もし公式の「F1 TV Pro」が解禁されるのであれば、それもまたアドオンという形で提供される可能性もあります。昨年末、DAZNが買収を発表したオーストラリアのFoxtelはそのような形をとっています。
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