NPB新撮影ルールと放映権のもろもろ
NPBが昨年9月に公表し、今年2月から施行された写真・動画撮影の新しいルールですが、当然ながら初期のうちはいろいろと問題が発生してしまいます。
当ブログでは放映権をテーマとしており、放映権の構成要素として「施設管理権」と「肖像権」があることは以前にも触れてきました。今回の話題は、その両方に絡んでくるものと言えます。
最初に大きく話題になったのは、いわゆるスタジアムグルメの写真投稿だったと記憶しています。個人的はこの程度なら問題なさそうにも思いますが、確かに規程を文字通りに解釈すれば、試合終了後でないとSNSにはアップできないように読み取れてしまいます。球団係員の方も、独自に判断する権限を持っていないためOKとは言えなかったのではないかと。
グルメには肖像権は関係ないので、施設管理権の問題ということになります。施設管理権は結構強い権利であり、撮影を全面禁止にすることもできてしまいます。さすがにそれだとPRになりませんので、どの範囲で認めるべきかを議論したうえでガイドラインが策定されているはずです。
肖像権の観点からは、プロ野球選手会から要望が出されたことが報じられました。プレー中の写真について、試合終了後であってもSNSの投稿がNGなのはいかがなものか、というものです。
この主張自体はうなずけるものであり、緩和に向けて動いてほしいと思うのですが、その一方でNPBと選手会はこれまで選手の肖像権の帰属について争っている関係でもあります。現在は統一契約書によって、肖像権はすべて球団側が管理するようになっていますが、それを一部選手自身が管理できるようにすべきと主張しています。
ですから、選手会の要望はファンのためを思って行動しているのだと単純に思わないほうがよく、その先には肖像権を活用したまた別のビジネスが発生すると考えたほうがよいでしょう。
NPB12球団の中でも、日本ハムはSNSへの投稿に寛容な姿勢を示してきましたが、これについてNPBが「改善勧告」を出したとのこと。日本ハム側は、規程に「主催者が承認した場合」という例外事項があることを根拠としてゆるい運用を行ってきましたが、NPB、および他の球団から見るとそれは「抜け駆け」的な印象を受けることになります。
エスコンフィールドのファウルゾーンが規程よりも狭かったという話を思い出します。これは、英語で書かれたルールを日本語に訳す時に解釈が変わってしまったのが理由でしたが、日本ハム球団の体質として、事前の確認や根回しが不足していたことも事実であり、今回の件も一方的に進めてしまった面は否めません。試合は相手がいて成立するものです。
裏を返せば、NPBという組織自体の弱さも指摘することができるでしょう。担当者が自分で判断することができず杓子定規になってしまうのも、逆に担当者がルールを勝手に解釈してしまうのも、結局のところ責任の所在が不明瞭であり、上の者が責任をとらない体制にあります。起こっていることは反対のようですが、根っこは同じなんですね。
12球団統一でこのようなルールを作ったのだから、逆に12球団で協力して押し進めるべきことはあるでしょう。試合中のSNS投稿を禁じるのであれば、そのぶん公式でさまざまな情報を提供していくべき、という意見には一理あります。先日のMLB東京シリーズでは、MLB公式のSNSが自ら情報を発信していたことが印象的です。
何事もアメリカが正しいと言うつもりはありませんけど、統括組織の力はもっと強くしていく必要がありますし、リーダーシップのあるコミッショナーを据えて、NPBの今後のあり方をきちんと示すべきでしょう。これは当ブログでもときどき取り上げる、放映権の一括管理問題にもつながっていくテーマです。
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