将棋AI、先手勝率が7割超えで人間にも影響か。
毎年ゴールデンウィークに開催される「世界コンピュータ将棋選手権」。今年開催された第35回大会では、開発者が弁護士であることで知られる「水匠」が優勝しました。「水匠」は、2020年にコロナ禍で中止となった第30回大会の代替イベントとして開催されたオンライン大会で優勝していますが、本イベントでは初優勝となります。
もはや人間をはるかに超えた実力を持つ将棋AIですが、ここ数年でさらに飛躍的な進化を遂げています。将棋ソフト「柿木将棋」の開発者として知られる柿木義一さんによると、直近3大会の決勝リーグでは先手の勝率が急上昇し、また平均手数が短くなっています。
もともと将棋は若干先手が有利とされ、プロ棋士の対局では先手の勝率が53%程度となっていますが、レベルが高くなるほどその数字は高くなります。タイトル戦では60%を超えると言われていますが、将棋AIどうしの対局になると70%を超えるわけです。
ちなみに藤井聡太七冠の先手勝率は88.6%です(210勝27敗、4月時点)。一手の差が大きな差となり、一度差が開くと挽回はきわめて難しくなります。
将棋AIの進歩が続くと、やがて先手勝率が100%となり、一手も指さずに勝負が決まる・・・といった世界がやってきそうですが、実際はそうならない可能性があります。ゲーム理論によると「先手必勝」「後手必勝」「引き分け」のいずれかに収束するそうですが、どれになるかはまだ確定していません。
オセロについては、2023年10月に「引き分け」となることを証明したとする論文が発表されています。まだこの証明が確定したわけではありませんが、将棋においても先手の攻めをすべて受け流せる手順が見つかれば、引き分けに収束する可能性もあります。
また、将棋の入門用として考案された「どうぶつしょうぎ」は後手必勝であることが証明されています。持ち駒を使えるという独特なルールを持つ将棋では、また異なった結論が示されることもあり得るわけです。
話が長くなりましたが、今後先手が有利な状況が続けば、いずれルールを改正する必要が出てくるかもしれません。「持ち時間に差をつける」「引き分けは後手の勝ちとする」「先手のみ禁じ手を設ける」などのアイデアがあがっていると聞きますが、江戸時代から400年以上にわたって基本的なルールが維持されてきた将棋にとって大きな転換期がやってくるのでしょうか。
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