ジブリ制作「火垂るの墓」Netflixで配信へ。
Netflixは、スタジオジブリが制作した名作アニメ映画『火垂るの墓』を7月15日から配信すると発表しました。日本において、ジブリ制作の映画が配信されるのは初のケースとなります。
スポーツを扱う当ブログとしては直接関係のない話題ではありますが、放映権に関する基本的な知識とは深く関係してきますので、ここで取り上げることにしました。
上で紹介した朝日新聞の記事、そしてNetflixからのプレスリリースにも記載されていますが、映画『火垂るの墓』の著作権を保有しているのは、原作小説を出版している新潮社です。なので、ジブリ制作の作品ではありますが、今回の配信を許諾したのは新潮社ということになります。
https://about.netflix.com/ja/news/grave-of-the-fireflies
このニュースをもって「ジブリがサブスク解禁」といった見出しを付けているメディアもあるようですが、正確な表現ではありません。ジブリに無断で話を進めたとは考えられないですが、少なくとも契約の主体は新潮社であり、ジブリではありません。
【追記】後に出てきた新潮社担当者のインタビュー記事において、ジブリと相談したといった内容がありませんでしたので、この部分は削除します。
スタジオジブリの現在の親会社は日本テレビであり、ジブリ作品は日本テレビで放送され、高い視聴率を出し続けています。5月2日には『君たちはどう生きるか』が初めて放送され、12.4%を獲得。最近では「バルス祭り」でもおなじみ『天空の城ラピュタ』に次ぐ数字をあげています。
高い視聴率が出ている限り、日本テレビとしては配信に回す必然性がないと言えます。もちろん将来的には解禁される時が来ると思われますが、その際には同じく日テレの傘下にあるHuluが第一候補となるでしょう。
その一方で、海外では2020年からジブリ作品が配信されています。北米ではHBO Max(現: Max)、それ以外ではNetflixでの配信です。
これらの契約は前者がGKIDS、後者がワイルドバンチという映画配給会社が窓口となっています。スポーツにおける代理店と同様の役割を果たしており、こういった共通点も参考になります。
このニュースで強調すべきことは、主に次の2点ではないかと思われます。これはスポーツの放映権においても共通する考え方です。ニュースを読む際には、誰が権利を持っていて、どの国が対象となっているのかを確認する習慣を身につけるべきでしょう。
- 制作者と権利者は必ずしも一致しない
- 国によって契約内容が異なることがある
直近の事例だと、DAZNがリーグ・アンとの放映権契約を解除するという話題がありましたが、これはフランス国内における契約の話であり、日本における契約はまた別に結ばれています。なので、現時点では来シーズンも引き続き日本のDAZNで配信されるものと推定されますが、SNSではそこを混同している発言が多数見受けられます。
放映権という言葉は法律で定義されている用語ではなく、いくつかの権利が複合的に組み合わさった概念です。一方、今回の件は、著作権法で定められている「公衆送信権」が主な対象となっています。
Jリーグの公式サイトには「放映権」よりも「公衆送信権」が使われる頻度が高く、決算などの資料では放映権料を「公衆送信権料」という名目で計上しています。
これは法律で定義されている言葉を使ったほうがより正確だという判断もあるでしょうが、それ以上にJリーグが自ら映像を制作し、著作権を保有・管理していることを強調するねらいがあるのでしょう。2017年にDAZNと契約を結ぶ以前は、スカパーが映像を制作し、著作権も保有していたわけです。
【追記】
新潮社・Netflixの担当者にインタビューした記事が掲載されましたので、参考としてリンクを記載します。
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