NCAA、米下院と和解。学生のプロ解禁へ。
NCAA(全米大学体育協会)は、学生への報酬支払いをめぐって米下院から訴訟を提起されていましたが、このたび和解が成立したとのこと。これにより、放映権料などの配分を学生が直接受け取ることが解禁され、今年7月から学生に直接支払われるようになります。
また、2016年以降に在籍した学生に対してもさかのぼって配分を受ける権利が認められ、今後10年間で総額28億ドルが配分対象になるとのことです。
これにより、アマチュアとプロを隔てる壁は崩壊し、アメリカの学生スポーツは事実上のプロ化へと変貌することになります。
この件については複雑なので、筆者もすべてを説明することはできないのですが、NCAAはこれまで学生がスポーツによって収入を得ることを認めておらず、たびたび訴訟を提起されていました。その代わりにスポーツを対象とした奨学金制度がありますが、この恩恵を受けられる学生は限られています。
日本だと企業スポーツが存在しますが、アメリカでは学生スポーツがプロに向けての育成機関であり、多くの学生は自ら学費を支払っています。アメリカの大学の学費は高く、公立大学でも年間25,000ドル以上かかるとのことです。
2021年には「NIL」と呼ばれる制度が導入され、学生は自らのName(名前)・Image(画像)・Likeness(肖像権)を活用して収入を得ることが認められました。これによりスポンサーと契約したり、SNSを利用したインフルエンサーとして活動することができるようになりました。
しかし、この時点ではプレーそのものから収入を得ることはまだ認められていません。今回の和解によって、ようやくプレー自体をマネタイズできるようになったわけです。
ということで大きな一歩となったわけですが、その一方で実際に恩恵を受けられる学生は多くないであろうとされます。ドラフト上位での指名が確約されているスター選手たちが、早めに稼げるようになっただけかもしれません。ただ、中にはケガなどでプロを断念せざるを得なくなる選手もいるでしょうから、早く稼げるのなら稼いだほうがよいのでしょう。
プロが存在する一部の競技に偏ることも懸念されます。アメフトとバスケが多くの収益をあげていることは事実ですが、他のスポーツにお金が回らないということになれば問題です。その対策として、従来設けられていた奨学金の上限を撤廃し、多くの学生に奨学金が行き届くようにするとのことですが、選手数そのものが減らされる恐れもあります。
日本でも今後、学生が事実上のプロとして活動するように未来が訪れるのでしょうか。日本では2019年にUNIVAS(大学スポーツ協会)が発足し「日本版NCAA」として活動していますが、現時点では熱心に放映権ビジネスをやっているというわけでもありません。もちろん、アメリカの真似をすればいいというものではなく、日本には日本なりのやり方があります。
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