Bリーグドラフト問題にみる米欧の文化の差
『Bリーグ誕生』などの著書がある、スポーツライターの大島和人さんが、来年1月に初めて開催されるBリーグドラフトについて「始まる前から終わっている」と、なかなか辛辣な批判記事を書いています。サッカーや野球、そして最近ではハンドボールについても取材を行っている大島氏なだけに、それぞれのスポーツが抱える組織的な課題については丁寧に拾っていると感じます。
各論についてはぜひ記事を読んで頂ければと思いますが、本記事では総論として、アメリカとヨーロッパのスポーツ文化の違いについて触れることにします。日本は両者が混ざり合った環境にあり、どちらに軸足を置いて進めていくかが問われます。
NBLとbjリーグに分裂した日本のバスケ界は、FIBAからの制裁を受け、改めてリーグ統一に進むことになります。その際に川淵三郎氏を招き「強権」をもって進めたことは、大島氏の『Bリーグ誕生』に詳しいです。
FIBAはヨーロッパの組織であり、またJリーグのチェアマンだった川淵氏もまたヨーロッパ型の発想の持ち主です。読売のナベツネ氏との対立は有名ですが、アメリカンスポーツである野球との思想の対立であるという見方もできるでしょう。もっとも、日本のプロ野球は長い歴史の中ですっかり「日本化」されてしまい、MLBともまた別の道を歩んでおりますが・・・
Bリーグ発足にあたり、各クラブがユースチームを持つようになりました。これはヨーロッパ型の発想ですが、これがドラフト制度との相性が悪いわけです。自前で選手を育てたとしても、他のチームに指名されてしまえば意味がありません。大島氏の記事によると、Bリーグの経営者にはNBAに憧れ、NBAを手本にすべきだという考えの持ち主が多いとか。
Bリーグのドラフトはユース出身選手を優遇するルールが追加されているのですが、振り返ればその時点から矛盾をはらんだスタートだったとも言えます。
アメリカのプロスポーツは、昇降格がないクローズドリーグとして運営されています。もちろん個々のクラブが経営努力する必要はありますが、所属するすべてのチームが共同体となって運営されます。エキサイティングな試合を提供するために設けられる仕掛けが「戦力均衡」であり、達成する手段がドラフトです。
Bリーグは来季から「Bプレミア」が発足し、昇降格が廃止されますが、それでも下部リーグが存在するということ自体もある意味矛盾だと言えます。有力選手でも出場機会を求めて、あえて(ドラフトの対象とならない)下部リーグを選ぶケースが増えると推測されています。
Bリーグも対策として、レンタル制度を活発化させようとしていますが、これはサッカー的な発想ですね。やはり両者を折衷させるのはなかなか大変です。
戦力均衡策としては、ドラフトだけでなく財政面での枠組みも存在します。サラリーキャップ、贅沢税、レベニューシェアといったものがあげられます。Bプレミアはサラリーキャップを導入することが決まっていますが、レベニューシェアについてはまだまだです。2023-24シーズンにおいては、B1で総額13億円、B2も含めると15.8億円の配分金がありますが、NBAと比較してはいけません。
ということで、いろいろと心配の種が多い中での船出です。やってみてから改善すればよいとの声もあるでしょうが、選手にとっては一生の選択ですから、あらかじめとれる対策は是非とって頂ければと願います。
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