【追記あり】楽天、応援歌を全面刷新。球団と応援団の正しい関係とは?

東北楽天イーグルスが今年から選手の応援歌を「著作権の問題等」を理由にすべて刷新すると発表し、楽天ファンの中に動揺が広がっている。


「2019シーズンの新応援歌についてお知らせいたします。

楽天野球団と私設応援団の皆さまと繰り返し協議をさせていただいた結果、著作権の問題等を踏まえ、2019シーズンは応援歌を刷新させていただく運びとなりました。

応援歌を覚えて、熱い応援をお願いいたします!」



おそらく問題なのは著作権ではなくて「等」のほうなのだろう。twitterをあさってみると批判の声がいろいろと出てくる。

この件に関しては当然ファンのほうが詳しいので私の出る幕はないとは思うけど、やはり「応援する側」と「応援される側」には一定の距離が必要であって、球団が主導しての応援というのはやはりしっくりこない。

ということで著作権のほうについて書くことにするのですが、当然ながら筆者は法律の専門家ではないし、過去の判例も出ていないグレーゾーンなので、ここでは今後争点になり得るものについて取り上げることにしましょう。

応援において著作権が問題になるのは既存の曲をアレンジした応援歌。楽天だと「青葉城恋歌」とか、他球団のファンからは「ガリガリ君」で親しまれている(^^;)「八木山ベニーランド」のCMソングとか。

ほとんどの球団にこういった応援歌はある。いちおう、非営利目的でなければ演奏すること自体に問題はない。入場料をとるのは球団であり、私設応援団ではない。しかし、私設応援団ではなく、球団主導の応援団となると当然話が変わってくる。


次に、試合映像の中に他者の著作物であるところの曲がまぎれ込むことへのリスク。同様のことは高校野球中継なども言えるのだけど、野球の試合という主たるコンテンツの中に、たまたま他者が演奏した著作物が入り込んでしまった場合、それを分離するのが困難であれば著作権侵害とはいえない。このあたりは著作権法の中に「写り込み」として定義されている。

ただし「著作者の利益を不当に害する場合」はその限りではないので、この判断については実際に訴訟が起きてみないと判断はできない。

試合映像の著作権は一般的に主催球団が管理している。なので、球団自らが主導する応援団が演奏する曲に他者の著作物がまぎれ込んでいたら、「たまたま」という言い逃れはできない。もちろんもとの作曲者に許可を得るという方法もあるのだけど、今回楽天球団はその道を選ばず、他の作曲者を立ててすべてオリジナル曲に変更するという手段をとった。

この理屈だと、もし私設応援団がオリジナル曲を使っていたとするならば、楽天球団が私設応援団に対して著作権料を支払うことになるのだけど、どうも調べた限りでは支払ったという話は出てこない。過去には応援歌を収録したCDも発売されているけど、この場合はおそらく応援団を除いて個別に許可をとったのではないか。


「たまたま」か「意図的」か。「営利目的」なのか「非営利」なのか。その線引きはきちんと持っておかねばならない。ということで、つい最近話題になったこのニュースを思い出しました。

結果的に処分は見送りとなったけど、どこからが営利目的なのか、その基準があいまいであることにこの問題は帰結する。もちろんプロとアマチュアではその基準が違って然りなのだけど…そうすると、今度はプロとはなにか、アマチュアとはなにか?という話にまで到達してしまいそう。

現在大河ドラマ『いだてん』では、まさに「アマチュアリズムとはなにか?」というテーマがストーリーに絡んでいるので、このあたりも後ほど書いてみたいなぁと思います。

【追記 2/26 7:30】
抗議殺到で一部の応援歌が元に戻ったとのこと。言ってみるものですね。
とはいえ、まだ一部であるわけで、火種が消えたわけでもなく。また別の形で炎上が起きそうな気もします。

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