IOC、一部競技の夏→冬移行を検討。
IOC(国際オリンピック委員会)は、現在夏季オリンピックで開催されている競技の一部を冬季オリンピックに移行することを本格的に検討していくと報じられています。
夏季大会の肥大化による分散や、温暖化によって冬季大会の開催候補が減っていることが理由としてあげられています。対象となる競技としては、室内で行われる球技のほか、柔道・ボクシングなど格闘技も候補としてあがっているとのこと。
この案自体は以前から提案されてきたことであり、そう驚くものではありません。これとは別に、昨年から陸上のクロスカントリー、自転車のシクロクロスを冬季に開催するという提案もなされていました。早ければ2030年のフランス・アルプス大会で採用される可能性があるとされます。
これは、当時次期IOC会長の有力候補だったWA(世界陸連)のコー会長と、同じく会長選挙に立候補したフランス出身のUCI(世界自転車競技連合)・ラパルティアン会長の利害が一致したものと考えてよいかと思います。ただ、今年行われた会長選挙では二人揃って落選する羽目となりました。
この案は、すでに夏季に開催されている競技が冬季に新種目を追加するというもので、最大の課題である「大会の肥大化」を解消するものではありません。なので、競技そのものを移行するという案はかなりの大事となります。その競技の4年間のカレンダーを大幅に書き換えなければなりません。
そして、さらに大きな壁となっているのがオリンピック憲章です。冬季五輪は「雪上または氷上で行われる競技のみ」が開催されると記されています。クロスカントリーやシクロクロスは雪の上で開催することもありますが、雪が必須条件ではありません。憲章の改定はIOC総会で2/3以上の賛成票を得る必要があります。
冬季大会の競技団体で構成されるWOF(Winter Olympic Federations)は反対声明を出しています。IOCのコベントリー新会長が打ち出している改革への取り組みを支持するとしながらも、「雪と氷の祭典」とも呼ばれる冬季五輪の伝統やアイデンティティを薄めるアプローチは将来性を損ねるものだとしています。
放映権的な側面から言うと、大会規模は夏と冬で2:1と言ったところです。そういう観点からはもっと半々に近づけたほうがいいのでは、とも思います。ただ、人気競技が夏から冬に移ってくるとなると、冬の競技にとっては面白くありません。
ビジネス的には、ウィンタースポーツが盛んではない国に対しても冬季五輪を売り込みたいという意思は強いでしょう。今回候補にあがっている種目として「格闘技」がわざわざ名指しされているのは気になるところです。
格闘技が盛んな国となると、中東がまず思い浮かぶでしょうか。カタールやサウジアラビアが五輪招致に興味を示しているとされます。
2029年にはサウジアラビアの人工都市・ネオムで冬季アジア大会が行われる予定です。サウジも山間部では雪が降ります。ただ、ネオムの開発は遅れが生じており、韓国などで代替開催されるのではという報道も出ているなど微妙な状況ではあります。
もうひとつ気になるのがインドです。インドはレスリングの強豪国とされます。また、アーメダバードが2036年の夏季五輪招致に名乗りをあげています。
中東やインドが争うとなると、どちらかを冬季五輪に回すというアイデアが出てくるかもしれません。そうなると一部の競技を冬季に移行することが現実味を帯びてきます。インドだと、2028ロサンゼルス大会で採用されるクリケットなんかも移してよさそうです。
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