【詳報】MLB、2026年の放映権決着。次の争いは2029年

昨日、速報でお伝えしたとおり、MLBはNBCユニバーサル・Netflix・ESPNの3社と新たな放映権契約を結んだと発表しました。2026年からの3年契約で、金額は年間7.5億ドルとされています。(8億ドルとの報道もあり)


あらかじめ断っておきますが、今回の契約はいずれもアメリカ国内での話であり、日本とは直接関係ありません。ただし、この契約が終了した後の2029年以降は日本もおおいに関わってくる話です。


3社との契約ではあるのですが、もともとはESPNが2028年までの契約を今年限りで破棄したことが発端です。NBCとNetflixは、ESPNが手放す権利を継承することになりました。その一方で、ESPNはこれまでMLBが販売していなかった権利を新たに獲得していますので、本来的には2つの話が並行して走っていることになります。

今回契約した3社のそれぞれの思惑について簡単に触れておきます。


【NBC】日曜夜はおまかせ。NFL・NBA・MLBを網羅


NBCでのMLB中継は2000年以来26年ぶりとなります。ESPNが放送している日曜夜の試合 (Sunday Night Baseball)を獲得したことが最大のトピックとなります。


NBCは、NFLのSunday Night Footballを長年放送しており、また今シーズンからはNBAの権利も獲得。こちらも2002年以来23年ぶりとのことです。NBAも日曜夜の試合を獲得しているため、これにより通年で日曜夜はスポーツ中継を放送できることになります。


NBCは2021年に閉鎖したチャンネル「NBCSN」を最近復活させました。ストリーミングのPeacockとともに、地上波では収まりきれない試合を中継することになります。


また、日曜昼の試合(MLB Sunday Leadoff) についても獲得しています。こちらはPeacockで独占配信します。こちらはESPNではなく、STB(セットトップボックス)大手の「Roku」が権利を保有していますが、よくわからないままこちらもついてきました。

【Netflix】大イベントで注目を集め、2029年以降の拡大を狙う


開幕日に唯一開催される試合、そしてホームランダービーと全米の注目が集まる試合を確保してきました。これまでもボクシングであったり、NFLのクリスマスゲームなど主に単発の大イベントを中継することで注目を集める戦略をとってきただけに、それに沿った形と言えます。日本でWBCの権利を獲得したのも同様です。


Netflixの主力商品はオリジナル作品であり、そちらの動線を作ることができれば投資を回収できるということでしょう。また、広告収入の増加も大きな狙いです。大イベントのライブ配信であれば、高い料金を設定することができます。


今回獲得に名乗りをあげたのは、2029年以降の放映権争いに参戦する布石だと考えてよいでしょう。最近はグローバル向けの放映権を設定するパターンが増えています。NBAはAmazonが一部の試合についてグローバルの権利を獲得。また、欧州CLでもグローバル向けのパッケージが設定され、現在入札が始まっています。


MLBにおいても一部の試合がグローバル向けに設定される可能性が高くなっており、Netflixは最有力候補と言ってよいでしょう。そうなった場合、もちろん日本でもNetflixでMLB中継が行われることになります。

【ESPN】全米向けを切り捨て、ローカル放映権への転換に成功


ESPNにとって、年間5.5億ドルの負担は重すぎました。ゆえにオプトアウトの権限を行使したわけですが、かと言ってMLBが不要になったわけではありません。全米向けの権利としては金額ほどの価値がないと判断した一方、ローカルの放映権についてはまだまだ価値があると考えたのでしょう。


Bally Sports(現在はFanDuel Sports Network)の経営破綻に象徴されるように、ローカル放映権ビジネスは曲がり角に来ています。6球団の放映権契約は、RSN(Regional Sports Network)を離れてMLBの直轄になりました。これらをまとめてESPNが持っていったのです。


また、MLB.TVの運営権もあわせて獲得しています。MLB.TVはテレビで放送されない試合を配信するもので、ローカル放映権の地域外からも試合を視聴できます。


MLBは次の放映権サイクルが始まる2029年に向けて、ローカル放映権もなるべく整理したいという意向を持っています。実際に応じる球団がいくつあるかは不透明ですが、これらも一括してESPNに販売するというシナリオが成立する可能性は高いです。

2029年、全米・ローカル・海外の放映権がシャッフルか


今回発表された契約、そして既存の契約も含め、全米向けの放映権契約は2028年で終了します。また、海外向けについても多くは2028年が区切りであると考えられ、日本でも電通との契約は2028年までとされます。


2029年から始まる新たなサイクルにおいては、あらゆる放映権契約がシャッフルされ、新たなパッケージが組成される予定です。その中に上述したとおり、グローバル向けのパッケージが加わる可能性も十分考えられます。


WBCの放映権において、日本ではテレビ局や電通に話が来る前にNetflixがさらっていったようです。同じことが繰り返されるのであれば、2029年以降のMLB中継もNetflixなどネット配信で占められ、NHKなどのテレビ中継は消える可能性があります。


今年からNBAの放映権が新たなサイクルとなり、MLBの金額を上回ったことが話題となりました。しかし、MLBも人気が回復傾向にあるとも報じられており、巻き返しを狙っています。現在のMLBの放映権は年間40億ドル程度の市場規模と推定されますが、NBAの年間69億ドルが大きなターゲットとなるでしょう。

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