アメリカ競馬三冠レースに再編騒動
アメリカ競馬の「クラシック三冠」と呼ばれるレースは、日本と異なり5月~6月の短い時期に集中して開催されます。それ故に過酷とされるわけですが、最近になってこの「三冠」の地位が揺らぐ騒動が起きました。
発端となったのは、一冠目にあたるケンタッキーダービーの主催者と、三冠目にあたるベルモントステークスの主催者がタッグを組み、来年から「サラブレッドチャンピオンシップシリーズ」を創設すると発表したことです。全6レースからなるシリーズですが、二冠目にあたるプリークネスステークスが外されています。
すると、プリークネスSの主催者は、来年から開催日を1週後ろ倒しにすると発表しました。また、NBCと結んでいる放映権契約を2032年まで6年延長すると報じられています。
過酷なスケジュールから、ケンタッキーダービーの出走馬がプリークネスSを回避する動きが目立っており、ここ2年は勝ち馬ですらスキップしていました。「三冠」の権利を自ら捨てていたわけです。ベルモントSの日程は動かないので、来年以降はプリークネスSを選んでもらおうという狙いです。
放映権は数社による争奪戦となっていたようで、ベルモントSの権利を持つFOXも候補でしたが、NBCが維持することに成功しました。Netflixの名前もあがっていたとか。
NBCにとっては1週後ろ倒しがプラスになりそうです。この時期はNBAのカンファレンスファイナルの放映権も持っており、昼は競馬、夜はNBAで連動企画を組むことができます。開催日が土曜→日曜になったのもその関連と思われます。
日本の(中央)競馬はすべてJRAがコントロールしていますが、アメリカではレースごとに主催者がばらばらであり、放映権もまたばらばらです。そのため、こういった駆け引きも行われることになります。
商業的にも日本の競馬はうまくやっているほうで、アメリカの競馬は経営が厳しくなっています。競馬場が閉鎖されるというニュースも目立ちます。
ハリウッドパーク競馬場(カリフォルニア州)は、現在So-Fiスタジアムになりました。アーリントンパーク競馬場(イリノイ州)もNFLのシカゴ・ベアーズに売却され、跡地はスタジアムに変貌します。
プリークネスSの主催者だった1/ST Racing社も、ピムリコ競馬場の老朽化などで苦しんでおり、撤退を決定。競馬場はメリーランド州に売却し、開催権も返上しましたが、プリークネスSの商標などといったIP(知的財産権)は引き続き保有していました。
今年6月、そのIPをケンタッキーダービーの主催者であるチャーチルダウンズ社が買収すると発表しています。メリーランド州とライセンス契約を結ぶ意向だったとのことですが、要するに新シリーズに組み込みたかったのだろうと推測できます。
しかし、競馬場の所有者であるメリーランド州はこの買収を拒否し、自らIPを買い取ることを決定します。チャーチルダウンズ社の提案は8,500万ドルと推定されますが、それ以上の金額を提示したものと思われます。財源は債券発行で賄われるとのことです。
これにより、新シリーズはプリークネスS抜きで発足せざるを得なかったわけです。誰が悪かったのかを判断することは難しいですが、プリークネスS側にも放映権の契約更新を含めた思惑があり、それらが交錯した結果、このような複雑な事情が発生したことになります。
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