「アスリートファースト」ってなんだろう。東京五輪の日程発表。

東京五輪の詳細な競技日程が発表され、すでに明らかになっている通り、決勝が午前中に開催される競技が出てきました。

オリンピックが利権まみれの商業主義に堕したことは事実として、当ブログではこのことについてあまり否定的なスタンスではありません。
アマチュアの祭典だったオリンピックはいまやプロの大会となり、彼らには稼ぐ権利があります。オリンピック自体には賞金はないけど、その名誉は今後いくらでも収入に変えられる。そういう意味で巨額のお金が動くことを直ちに悪だとは考えません。

もちろん選手の安全に配慮するのは義務ですが、午前中に決勝戦をすること自体がそこまで悪なのか。
むしろ平昌五輪のように深夜まで競技を行ったのは、人間の生理的リズムを無視したもので批判すべきでしょう。五輪とは離れますが、川内選手が出場予定の世界陸上ドーハ大会に至っては、マラソンのスタートが深夜0時に設定されています。

最高のパフォーマンスを発揮できる場を作ることと、稼げる環境を作ること。その両方があってこその「アスリートファースト」だと思うのですが、皆さんはどうお考えでしょう。
ご存知の通り、こうした時間調整が行われた背景には夏の東京の暑さだけではなく、米NBCが支払う巨額な放映権料の影響があることは明白です。なにしろ屋内競技であるバスケや水泳も午前決勝の対象になってますし。これらはアメリカでも人気のある競技です。

NBCが支払う放映権料はいくらかというと、2014年ソチから2020年東京までの4大会合計で44億ドル。もちろん夏季と冬季では規模が異なりますが、1大会あたり11億ドルとなります。
また、この契約は2032年まで延長されており、6大会で76.5億ドル。1大会あたり13億ドル近くとなり、さらに増額されています。契約延長が決まった時点では2022年冬季五輪の開催地(北京)はまだ決定していませんから、かなりハイリスクな契約であると言えます。

かたや日本はと言うと、2018平昌と2020東京のセットで約6億ドル。NBCの1/4程度です。これを1局だけでは支払うことができず、NHK7割・民放3割で分担しています。(ジャパンコンソーシアム方式)
なので、正直なところ開催国であるにも関わらず日本の発言権は弱い。また逆に言えばアメリカのスポーツビジネスの規模の大きさを思い知らされます。

もっとも、日本だって似たようなことをやってたりしますからね。サッカーワールドカップで不自然な日程があったり、バレーボールでは日本戦はすべてゴールデンタイムだったり。そんなに他人のことを言えた義理じゃない気もします。

そして、OTTサービスの台頭によってオリンピックの放送のあり方も変わってきています。以前のNBCは注目競技のみを生中継し、あとは録画で済ませていたのです。しかし現在では自前のOTTサービスを活用して多数のライブ配信を行っています。

日本でも同様にNHKと民放がそれぞれストリーミングを実施。これらによってマイナー種目にも注目が集まるようになれば、たくさんの競技を集中的に開催することにも少しは意義が出てくるような気がします。

世界最高レベルの競技を見たいだけであれば、それは個々の競技の世界選手権を見ればよいわけで、現在では見る手段がたくさんあります。にも関わらず、なぜ短期間に集中開催する必要があるのか。
かつては「平和の祭典」「参加することに意義がある」でしたが、いまのオリンピックはさまざまな競技をセットで売り込むための巨大なパッケージである。そう考えたほうがいいのかもしれません。

また、そうであるならばオリンピックは無料で放送されなければいけません。
ヨーロッパではユーロスポーツを傘下に持つディスカバリー社が放映権を獲得したため、各国の無料放送局が交渉に苦労しているのだとか。最終的にはぎりぎりの線でまとまるものと思いますが、この一線は守ってもらわないと、オリンピックは崩壊の一途をたどることでしょう。
【追記】
ディスカバリー社の放映権料についても記しておきます。
2018~2024年の4大会合計で13億ユーロです。

【お知らせ】現在コメント機能が使えない状態です。感想・意見・誤情報のツッコミ等ございましたら、筆者のX(旧Twitter)までお願い致します。 @flower_highway

0コメント

  • 1000 / 1000