【本の紹介】電通とFIFA

この本は名前の通り電通とFIFAについて記されているのですが、まずは電通の話から。

まずは電通とスポーツマーケティングビジネスの黎明期について書かれ、ついで1984年ロサンゼルス五輪の成功の話へ。いまとなっては五輪の商業化の象徴として批判されがちな大会ですが、当時はまだちょろいもので。

重要人物として登場するのがアディダス創始者の息子であるホルスト・ダスラー氏。やがて電通はダスラー氏の会社と合弁で「ISL」という会社を設立し、五輪に加えてワールドカップにも食い込んでいきます。
ダスラー氏もなかなか黒い人物だったようですが、FIFAの内部はそれ以上に黒い空気が渦巻く世界。アベランジェ氏とブラッター氏の権力争いもあり、さすがの電通も出資比率を下げるなど引け腰に。裏を返せば自らの手を汚さずに暗躍していたとも言えますが。

そしてクライマックスが2002年のワールドカップ招致。当初は日本優勢と伝えられていたものが、寸前になってまさかの日韓共催に。その裏舞台についても描かれています。

ということでいったんスポーツと若干距離を置くようになったかと思われた電通ですが、企業そのものがグローバル化を進めるにあたり再度スポーツを強化しているのはご存知の通り。海外子会社を通じてDAZNにも出資していますね。
最近またぞろ労働問題を起こしている電通。もちろんそれ自体は大きな問題なのですが、それだけ寸暇を惜しまずハードワークするクレイジーな社員の集団であり、それゆえに獲得できた仕事も多いのです。
でも、そんな集団ですらFIFAという魔物の前にははね返されることもあるわけですね。コンプライアンスが最優先なのは言うまでもありませんが、これもまた人間の業というのを感じさせられます。

ISL社は日韓ワールドカップの放映権を巨額で獲得しましたが、その負担に耐えられず倒産。スポーツビジネスにおける汚点として歴史に刻まれることになりましたが、その内幕を少々知ることができたのも収穫でした。

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