【展望】2020年のDAZNが抱える課題。

2020年も放映権まわりの話題について中心的な存在となるのはやはりDAZNだろうと。

2016年8月に日本やドイツなどでローンチしたサービスは3年とちょっとが経過。3年というのはいろいろと節目になります。日本では4年目からJリーグの放映権料がアップしますし、今年が更新時期となる契約も続々と待っています。

ウクライナの大富豪がバックについているとは言え、資金は無限大ではありません。周囲は放送・IT業界の巨人だらけ。競争はますます激化しています。そんな中でも単年度黒字への道筋をつけねばなりません。

DAZNは非上場会社のため、その経営実態はなかなか見えてきません。契約者数は非公表ですし、以前は見られた財務データも見られなくなってしまいました。
よって周辺情報から類推するしかないのですが、今年DAZNが抱えるであろう課題についていくつか取り上げてみたいと思います。
■とにかく新規会員を獲得できるか?

まだまだDAZNの契約数は損益分岐点を大きく下回っている状況であり、引き続き新規の掘り起こしが最重要テーマです。
配信トラブルを起こしたり、機能改善が進まなかったり、既存会員にとってはストレスがたまりますが、限られた予算は既存会員の対策よりも新規獲得につぎ込まざるを得ない状況です。

やることはだいたい見えています。日本人をスポーツを観るのが大好きな層からほとんど見ない層まで分類し、それぞれの層に対して施策を打っていきます。

短期的には、新たな放映権の獲得やオリジナルコンテンツの製作で魅力を高めること。
中期的には、潜在顧客に課金してもらう仕掛けを作ること。
長期的には、スポーツが好きな人を増やし、全体のパイを拡大すること。

どれも大事なことなのですが、現状ではなかなか中長期の戦略は練りにくい。
そこで期待されるのがSNSの活用。スポーツのスーパープレーや珍プレー(汗)、選手の魅力を紹介する動画などをバズらせ、そのスポーツ自体に興味がない人に気をとめてもらう。リスクもありますが比較的低予算でできる施策です。

即効性で言うならば、新規獲得を期待できるコンテンツはやはり「NPB12球団コンプリート」なのですが、ひとつでもNGなら失敗という厳しい交渉です。
DAZN関係者は引き続き交渉を行っていることを明言してますが、これは周囲の空気を読むためにあえて言ってるのではないかと。いわば観測気球のようなものです。

もうひとつの論点としては「地域密着」があげられます。企業はグローバルでもサービスはローカルに。地元チームを応援することがきっかけでスポーツに目を向けてくれる人が増えれば加入者増にもつながります。

その意味でも55クラブが存在するJリーグの放映権を持つことは大きい。また、NPBにおいて地方局とのコラボが始まったことも今後につながるでしょう。
今年はBリーグの放映権が期限を迎えますが、果たして継続するのか。フランチャイズ制のリーグについては持っていて損はないかと思いますが…さて。
■東京五輪に向けた対策は?

オリンピックイヤーということで世界のスポーツにさまざまな影響が出てきます。顕著なのが日程の変更。日本でもNPBやJリーグなどが五輪期間にシーズンを中断します。

DAZNにオリンピックの放映権はありません。日本ではNHKと民放の共同体である「ジャパンコンソーシアム」が購入しており、ネット配信もNHKの公式サイトや、民放が共同運営する「gorin.jp」で行われます。

ですから、五輪種目に関して事前および事後にどう盛り上げていくか。それを検討したうえで新たなコンテンツを狙っていくことになるでしょう。また、開催期間中の穴埋めコンテンツを用意する必要も出てきます。

なお、ヨーロッパでは五輪の放映権を持つユーロスポーツとの提携によって、DAZNでも一部の試合が見られるようになる見込みです。それはそれで、いわゆる「にわかファン」をつかみ離さないための施策が求められることになります。
■アメリカにおけるボクシング重視戦略の行方は?

全世界での契約数が800万件に達したか?というニュースもありましたが、現在新規獲得を牽引しているのはボクシングのようです。

アメリカでは4大プロスポーツやカレッジスポーツにはすぐには食い込めませんが、ボクシングには食い込む隙がありました。長年中継を続けてきたHBOの撤退。そしてPPV中心の課金体系となっている点にもDAZNは目をつけました。

そこでイギリスのマッチルーム社と手を組んでアメリカに乗り込んできたわけです。プロモーターとしてはトップランク(ESPNと契約中)、PBC(FOXと契約中)に匹敵する存在感を示すようになってきました。

巨額の初期投資には無謀との見方もありましたが、着実と伸びているようです。要因としては、ESPNもOTTサービス「ESPN+」を開始したことで、リーズナブルに多くの試合を見られるようになったことがあげられるのですが、最近アメリカでのボクシングの観客動員が伸び悩んでいるという一面もあります。

そのため、イギリス発祥のマッチルームの価値が相対的に上がる。彼らはイギリスでも、また先日ルイスvsジョシュア戦を開催したサウジアラビアでもビッグマッチを組みました。アメリカでないことを強みに変えられるかもしれません。

また、日本も井上選手や村田選手の台頭もあり価値を高めつつあります。二人ともトップランクの契約選手ではありますが、とくに村田選手については東京ドームでの試合開催に意欲を燃やしており、対戦相手として(ともにDAZNと契約している)カネロやゴロフキンをリストアップしています。
この試合の交渉ではDAZNにとって有利な条件を引き出すことができるでしょう。放映権を取れればベストだし、渡しても他の選手を獲得する原資を得られます。

こうやってボクシングで足固めをしつつ、今後市場に出てくる大物を釣り上げる。アメリカにおいてはこんな戦略で進むのでしょう。ここで大赤字を出して他国のサービスにも悪影響が…なんてことがないようお願いしたいものです。
■新たなエリアへの参入はあるか?

本来ならば20か国くらいに進出してるはずだったのですが、現状はまだ半分にも満たず。ただ、やみくもに参入するのではなく、目玉となるコンテンツを揃えたうえで慎重に進めているのだとあえて好意的にとらえておきます。

そうなると真っ先に気になるのがタイです。タイサッカー協会の入札の結果がまもなく発表され、DAZNの勝利が噂されています。タイではすでに欧州CLの権利も持っているため、獲得に成功すればただちにサービス立ち上げに動くでしょう。

DAZNのサービスエリアで当該国のサッカーリーグを独占配信しているのは日本だけですが、タイでは代表戦もカップ戦も含まれています。日本で培ったノウハウを注入するのはもちろんですが、それ以上にできることの選択肢が広がっています。

その他の進出国についてはあくまでコンテンツありきなので予想はできませんが、中米や東欧あたりが有力かな…と勝手に予想しておきます。
■まとめ

まぁ…とにかく頑張れ(^-^;

言いたいこともいろいろありますけど、それは他のブログなりTwitterなりで散々書かれてますのでこちらでは省略します。
おそらく東京五輪をはさんで風景は一変するのではないかと考えておりますので、今後も動向を追い続けることにします。
以上

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