【五輪】保険のはなし。

東京五輪の開催がますます危ぶまれる中、賠償問題に加え保険への関心が高まっていますが、これについては具体的な契約内容がわからない以上そんなに書けることはありません。

わかっているのはIOCと大会組織委員会、そしてアメリカの放映権を持つNBC、ヨーロッパの放映権を持つディスカバリー(ユーロスポーツ)は保険に加入しているということです。

NBCとディスカバリーは損失を補填できる程度の金額を受け取れるようですが、注意すべき点は中止になれば当然放映権料を支払う義務はないということです。

実際にはアーカイブの利用権なども含まれるため全額ではありませんが、相当の割合が消えます。その分はIOCの損失となり、また分配を受ける組織委員会にも影響が及ぶことになります。

この損失をカバーするのは、IOCや組織委員会が自ら加入している保険ということになります。
昨年延期が決まった時点で、組織委員会には500億円の保険金が支払われたことがわかっています。具体的な金額が報じられたのはこれが唯一といってよさそうです。
この500億円が支払われたことにより、再度の延期や中止となっても同等の支払いは受けられないことになっています。そもそも保険会社が同じ条件で引き受けるわけがないので、当然と言えば当然です。
あくまで推定の話ではありますが、IOCは8億ドル、組織委員会は6.5億ドル程度の保険をかけているのでは、という記事があります。IOCが本来得られるはずだった収入からは大きな隔たりがあります。もちろん組織として存続できる最低限の金額だろうとは思うのですが…

で、この記事で書かれている「20~30億ドル」という数字がどうも独り歩きしているようで、他の記事にも使われているのを見かけました。

でも、これは東京五輪に関わるさまざまな業者がかけている保険の総額であることに注意せねばなりません。IOCや組織委員会が受け取る金額が20~30億ドルではないのです。
あと、コロナ禍は戦争や自然災害のように「免責」の対象になるのでは?という意見もみられましたが、その場合免責になるのは保険会社ということになりますので、主客が転倒していることも指摘しておいたほうがいいかもしれません。

すでにさまざまなイベントの中止に対して保険が支払われています。世界の保険会社の負担もかなり重くなっています。

保険金を満額受け取るためには、訴訟リスクに耐えうるエクスキューズも必要になります。ですから主催者は万全な感染対策を検討することが必要であり、開催の可否はそれを実行するためのリソースが確保できるかどうかで客観的に判断すべきでしょう。

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