プレミアリーグ放映権料の変遷と日本の動向

プレミアリーグの放映権料の推移についてまとめられているサイトが見つかったので紹介します。これに直近の情報を加えると以下のようになります。

2013-16: 52億ポンド (国内30、国外22)
2016-19: 81億ポンド (国内51、国外30)
2019-22: 92億ポンド (国内51、国外41)
2022-25: 105億ポンド (国内51、国外53)
※金額は3年間の合計

国内(イギリスおよびアイルランド)の放映権料は最近では停滞しており、国外が伸びていることが分かります。
さて、日本ではどうなっているのか。2016年にスポナビライブが参入したサイクルから大幅な増加が始まっていたようです。

2013-16: 2,430万ポンド (J SPORTS)
2016-19: 3,300万ポンド以上 (ソフトバンク)
2019-22: 3,600万ポンド (DAZN)
2022-25: 6,000万ポンド (Eclat)
※金額は3年間の合計

2013-16年


読者の方から以下のサイトを教えて頂きました。当時はJ SPORTSが放映権を持ち、またNHKもBSで放送していた時期です。

アジアの国別の金額も出ていますが、日本よりも韓国のほうが高かったことが分かります。韓国のほうが先にプレミア人気が高まっていたことを表しています。

2016-19年


ソフトバンクが参入してきたのがこのサイクルです。2016年に「スポナビライブ」を開始し、全試合を配信。J SPORTSにも一部試合をサブライセンスしていました。(2016-17シーズンはフジテレビNEXTにも)

しかし、翌年2017-18シーズンには競合であるDAZNにもサブライセンスを行うという異変が。おそらく初年度の会員獲得が不振に終わり、サービスを畳む準備を始めていたのでしょう。2018年2月にはスポナビライブのコンテンツをDAZNに引き渡し、5月にサービスを終了しています。
当時の放映権料なのですが、推定で47億円、当時の為替レートで約3,300万ポンドとなります。ただ、この金額が3年間の合計なのか、それとも1年間を指しているのかは明瞭ではありません。

これも読者の方から頂いた情報ですが、ソフトバンク(※)が発行した2018年度の有価証券報告書の中に以下の記載があります(185ページ)。

※事業会社のソフトバンク株式会社。ソフトバンクグループではないので注意。
当社グループのスポーツコンテンツ配信サービスにおいて、サッカー主要リーグの放映権を保有する取引先(以下「ライセンサー」)が、権利元であるサッカー主要リーグから、ライセンス料の支払遅延を理由として、サッカー主要リーグの放映契約を解除されました。
これを要因とし、当社グループはライセンサーよりサッカー主要リーグの放映契約の解除通知を受けました。
このため、当社グループは、同社より取得した配信権の評価減4,770百万円を「その他の営業費用」として認識しました。
また、当契約解除に伴い配信権取得にかかる債務の取り崩しを行ったことにより4,689百万円を「その他の営業収益」として認識しています。
2018年10月に当時プレミアリーグの代理店であったMP & Silvaが経営破綻しています。スポナビライブはラ・リーガの放映権も保有していましたが、ラ・リーガの代理店は別なので、「主要リーグ」はプレミア、「ライセンサー」はMP社を指していると考えられます。

DAZNに権利を譲渡していたものの、契約者は引き続きソフトバンクです。しかしMP社の破綻によってリーグとMP社の契約が解除となり、ソフトバンクも連鎖的に権利を失いました。帳簿上では放映権を資産として計上していたため、その処理を行ったわけです。

問題はどのように処理されたかです。すでに3年契約のうち2年は実行されていることから、この47億円は残り1年分とも3年分とも解釈することもできます。ただ、1年だとすると前回からの値上がり幅がなんとも大きすぎるので、ここでは3年分と考えることにします。

MP社が消えた最後の1年ですが、引き続きDAZNとJ SPORTSで配信・放送されています。ここは既存の権利者が保護された形となります。

2019-22年


このサイクルではDAZN独占となり、J SPORTSは放映権を失いました。金額については公表されていませんが、年1,800万ドルという情報があります。3年だと5,400万ドル(約3,600万ポンド)という計算です。

MP社の破綻により、新たな代理店は選定されておらず、リーグによる直接販売になったと考えられます。

DAZNにとってはソフトバンクがいなくなり、他の陣営にも資金力で対抗できる存在は見当たりませんので、前期と同等程度の金額でも落札できたのではないかと考えられますが、上述の予想が正しければ微増という形で収まりました。

怖いのはソフトバンクに替わる未知の勢力の参入なのですが、その懸念は3年後に現実となります。

2022-25年

ご存知の通り、韓国のEclat Media Groupが落札したと報じられています。金額は年2,670万ドルという情報が出ています。3年で8,000万ドル(約6,000万ポンド)という計算です。

DAZNはサブライセンスの交渉に入るものと考えられますが、3年前のJ SPORTSと同じ状況に立たされたと言えます。やったことはいつかやり返される。奪ったり、奪われたり。それが放映権ビジネスなのです。

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