【榮倉】SPOTV NOW成功の見通しとサブライセンスの可能性

来季からプレミアリーグの放映権を獲得したSPOTV NOW。DAZNが赤字経営から抜け出せない中で、それ以上の値段を提示してきたわけです。果たして勝算はあるのでしょうか。

と言っても、表に出ているデータはごく限られたものです。この記事に出てくる数字は推測に推測を重ねたものであることはあらかじめご留意ください。
放映権料については上述のSportbusinessの記事によると、日本が年2,670万ドル。韓国が年3,000万ドルとなっています。韓国のほうが高いのは入札の競争相手が多かったことによるものだそうです。契約期間は2024-25シーズンまでの3年間です。

今回の入札は日韓や東南アジアなど14か国を対象に行われましたが、Eclat社はSPOTVを展開している東南アジアでは権利を獲得せず(できず?)、日本と韓国で落札しました。資源をこの両国に集中投下することになります。

日本のSPOTV NOWは現在MLBを主力コンテンツとしています。放映権料は明らかではありませんが、2019年まで権利を持っていたDAZNは年400万ドルと推定されています。

それと同等と仮定すれば、プレミアはその7倍近くとなります。プレミアはSPOTV NOWの命運を握るキラーコンテンツと言えます。
放映権料だけで3年8,000万ドル(約100億円)。番組制作費や宣伝費など諸々のコストを積み上げれば、総投資額は200億円を超えるでしょう。そこまでやっても3年後にはまた別の業者に奪われるかもしれません。3年間でこの投資を回収する計画が必要です。

先のSportbusinessの記事には、現在DAZNが支払っている放映権料は年1,800万ドルとの記載もあります。おそらくDAZNとEclatの2社が競り合ったであろうと考えると、DAZNの予算上限は1,800~2,670万ドルの間にあったと言えます。

DAZNが発表した2021年の視聴数ランキングでは、上位10試合のうち3試合がプレミアでした。それだけ重要なコンテンツであっても、採算がとれなければ意味がありません。赤字上等の投資フェーズはもう終わっているのです。
SPOTV NOWも最初は赤字上等と考えているかもしれませんが、資金力のバックボーンではDAZNを下回り、そこまで無茶はできないものと考えられます。まだ価格について言及はされていませんが、現行の月1,300円、年間9,900円(税込)という設定はいずれ見直すことになるでしょう。

DAZNの予算上限を2,400万ドル(30億円)、一人あたりの年間売上を23,000円程度と勝手に設定すると、放映権料を回収するには13万件の契約が必要となります。諸経費を乗せると20万件には達しそうです。

見方を変えればDAZNは20万件の流出は覚悟しているとも言えます。その20万件の多くがプレミアのコア視聴者であり、ほとんどがSPOTV NOWに移行するでしょう。そこに泣く泣くDAZNも残してSPOTV NOWに契約する人を加えると、ベースとなる契約は30~40万件といったところでしょうか。

価格がそのままであれば、SPOTV NOWの一人あたりの年間売上は9,000円程度です。3年100億円の放映権料を回収するには、3年でのべ110万人が必要となります。諸経費含めれば200万人は欲しいところです。

単にDAZNから顧客を奪うだけでは足りません。日本におけるプレミアの人気をさらに高めることが求められます。また、他のコンテンツを充実させていくことも必要でしょう。
大々的にビジネスを展開するのであれば当然独占でしょうが、リスクヘッジも兼ねてサブライセンスを行うのも選択肢です。ITmediaの記事によると、DAZNと交渉する意思はあるとしています。

※この記事には過去の経緯の記載でいくつか誤りがありますね…。まぁコメントは間違ってないでしょうが。

MLBをABEMAにサブライセンスしていることはご存知の通りです。これによって契約数は多少落ちるものの、まとまったマネーと宣伝機会を得ることができるわけです。

DAZNはJリーグやAFCの権利を持ち、日本国内のサッカーにおいては高い地位を築いていますので、プレミアについては日本人所属クラブの試合を配信したいのではないかと。日本人とか関係ないというファンは諦めざるを得ません。

例えば毎節10試合のうち2~3試合を非独占でライセンスし、試合の選択権もある程度認めるといった方法は考えられます。

また、DAZNの持つ権利を逆にライセンスしてもらうという手段もあり得ます。FAカップ、およびスーパーカップ(コミュニティシールド)は有力な選択肢です。今季決勝戦を緊急配信したカラバオカップについても、もし来季以降の話が進んでいれば候補となります。

もちろん交渉相手はDAZNだけとは限らず、MLBで組んでいるABEMAを始め他の候補も考えられます。まぁ何が起こっても不思議ではありません。
一昨年までは韓国国内でのビジネスが中心だったEclat社。昨年は東南アジアに進出し、今年は一気に大きな勝負に出ていると言えます。正直リスクは大きいです。

DAZNがサービスを開始した時ほどの派手な展開はないかと思われますが、どこまで先行投資できるのか。これまで蓄積してきた体力も問われることになります。

ただ、確実なのはいつかはその投資額を回収する必要があるということ。はね上がった放映権料は、やがて我々の料金にはね反ってくることになります。

競争原理は必要ですが、やりすぎれば必ず反動が起こります。そうならないためにはプレミアの人気自体がもっと上がらなければなりません。日本人選手が増えれば…というのは他力本願です。それ以上になにができるのか、SPOTVの戦略に期待したいところです。

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