【息抜き】短編小説「トランジスタ技術の圧縮」

フジテレビで2/25に放送された「タイプライターズ」という番組で、いきものががり・水野良樹さんがお勧めの小説として「トランジスタ技術の圧縮」(宮内悠介作)という作品をあげていました。いまならTVerで視聴できるかと思います。


雑誌「トランジスタ技術」の広告ページを取り外し、再製本する技術を競う架空の競技「トラ技圧縮コンテスト」を描いた小説ですが…まぁ、何のこっちゃと思うかもしれません。でも、この競技はある意味で立派なスポーツと言えそうなので、当ブログで取り上げてみることにしました。

もともとは趣味の遊びだったものが競技化され、やがては地上波ゴールデンタイムで放送されるほどの人気を獲得します。しかし、その人気も一時的なものでしかありません。その原因は、テレビで人気が出てしまったことによる大衆化でした。より刺激を求められるようにルールが改正され、競技そのものが変質していきます。まぁ、これまでたくさんのスポーツがたどってきた道なわけですね。


ルールが変われば技術も変化します。美しさを重視する「アイロン派」は、やがてスピードを重視する「毟り派」に主役を譲ることになりました。競技の人気は低下し、ゴールデンタイムから深夜枠へ。そして電子書籍の普及が追い討ちとなり、2022年をもってコンテストは終了します。このあたりの描写が、スポーツビジネス的にもなんかリアルを感じさせます。


しかし、ファンからの強い要望を受け、2036年に一回限りの復活が決まります。会場は東京ドーム。「毟り派」の前王者と「アイロン派」の挑戦者の戦いがクライマックスとなります。異なる流儀がせめぎ合うからこそスポーツは面白い。

荒唐無稽な珍競技をバカバカしく描いた小説でありながら、ひとつのスポーツが生まれ、発展し、そして衰退していく流れを示した点で、妙に感慨深い気持ちにさせられる作品でした。個人的にも「トランジスタ技術」ではありませんが、広告が大量に入ってぶ厚かったかつてのパソコン雑誌を覚えているだけに、懐かしい気分を覚えました。


この「トランジスタ技術の圧縮」ですが、なんとWebで無料公開中です。そして、続編の「トランジスタ技術の圧縮~新たなる旅立ち」が、リアルの雑誌「トランジスタ技術」に別冊付録で収録されています。バカをやるなら、徹底的に突き詰めたほうがいいということですね。

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