【新潮】DAZNに足元を見られるJリーグ?

また適当な記事が出てきたなぁ…とは思うのですが、いちおう取り上げておきましょう。

先日、JリーグとDAZNとの契約内容見直しが発表され、新たな契約では2023~33年の11年間で総額2,395億円と発表されました。ただし、従来の契約ではDAZNの契約数が基準を上回ればレベニューシェアが追加されることになっていましたが、今回の契約ではレベニューシェア込みの最大金額となっており、実際にはこれより低い金額になる可能性があります。


これについて、週刊新潮の記事では「DAZNに足元を見られて値切られた」という関係者の話が載っているのですが、読み進めてみると自ら答えを出しちゃってます。DAZN以外にJリーグの放映権を買うメディアがいないのだから、言い値で売るしかない…と。この時点で話は終了なんじゃないかと思います。


DAZNとの契約は金額がだんだん上がる仕組みである…という話も以前から出ていたものであり、最初の3年間は160億円程度、4年目からは185億円程度になると言われていました。コロナ禍によるダメージもあり、契約5年目にあたる2021年に最初の見直しが行われ、年額では若干下がっていると思われます。

Jリーグが得ている放映権料については、決算資料に書かれています。2016年度までは「放送権料収益」、2017年度からは「公衆送信権料収益」という項目で計上されています。なお、Jリーグの会計年度は1/1~12/31です。


  • 2016年度: 5,050(百万円) ※スカパーとの契約最終年
  • 2017年度: 17,804  ※DAZNとの契約初年度
  • 2018年度: 17,787
  • 2019年度: 17,794
  • 2020年度: 19,942
  • 2021年度: 18,612  ※契約見直し
  • 2022年度:  19,404
  • 2023年度(予算): 19,239  ※2度目の契約見直し

この金額はDAZNだけでなく、テレビ局によるJリーグ中継や、ルヴァン杯も含まれますのでDAZNが支払った金額はもう少し下がりますが、スカパー時代は年50億円程度、DAZNになって160億円程度という話はおおむね信頼できるといってよいでしょう。


ただし、DAZNになってからJリーグが自ら映像製作を手がけるようになったため、その分のコストは上がっています。「その他の支出」の項目をみると、2016年度の2,943百万円が、2017年度には8,280百万円となっており、50億円ほどコストが増えています。

巨額の赤字を計上し、2年連続で値上げを実施。日本からの撤退すら噂されたDAZNがなぜ契約延長に踏み切ったのか…というのは未だに謎ではあるのですが、新潮の記事では「スポーツベッティング解禁を待っている」という話も出ています。


DAZNとスポーツベッティングの関係は日本上陸時から言われてきた話ですが、DAZN(当時はPerform Group)はベッティング業者向けに映像やデータを提供するビジネスを行っていたのであり、自らが胴元だったわけではありません。そのB2B事業もすでに売却済みで、現在のSTATS Perform社となっています。そもそも、いつになるか分からない国策を目当てに何千億円もの巨額を突っ込むなんて、それこそ大穴に賭けるようなものです。


ということで、当時から流れていた噂は正直なところ胡散臭いものだったわけですが、最近になって事情が変わってきたところもあります。DAZNは新しい経営者をベッティング業界から迎え入れ、ヨーロッパで「DAZN BET」の展開を始めています。そして、日本でもスポーツベッティング解禁に向けた動きがあると昨年報じられました。

昨年12月には、経済産業省とスポーツ庁が共同で「スポーツDXレポート」を発行しています。ベッティングだけでなく、NFTやファンタジーゲームなど、スポーツとデジタルを取り巻く動きについてまとめており、とても読み応えがあるものです。


また近いうちに観測気球が上がるんだと思いますが、まだまだ世論的には抵抗が強く、現実にはスポーツベッティングの解禁が何年後になるかは分かりません。それを待つために10年先までの契約を結ぶというのもよく分かりません。怪しい記事であることには変わりませんが、それでも数年前と比べれば周囲の状況は整いつつあるとも言えるでしょう。

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