米CATV2位の業者とディズニーが契約切れ。

アメリカで第2位のCATVサービス「Spectrum」を運営するCharter Communicationsと、ディズニーの契約が8月31日をもって切れたとのこと。これにより、ディズニー傘下のABCやESPNなどがSpectrumで視聴できなくなっています。


これにより、1,470万人と推定される加入者に影響が出ます。スポーツにおいては全米オープンテニス、そしてNFLが開幕する直前というタイミングにあたります。逆に言えば、このタイミングだからこそ強気な交渉ができるということでもあります。

契約切れによって放送が中断されることは、アメリカでは珍しくありません。最近の例だと、2021年12月にディズニーとYouTube TVの契約が切れたことがありました。


交渉の経緯について詳細は明かされていませんが、Spectrum側はディズニーからの値上げ要求をのむ代わりに、disney+やESPN+などのストリーミングサービスをセットで提供するという条件を出していたようです。いわゆる「コードカッター」と呼ばれる、CATVを解約してストリーミングに流れる顧客が止まらない中で、CATV陣営もさまざまな策をめぐらせています。

CATV大国のアメリカですが、顧客は見もしないチャンネルに対して多大な負担を強いられているというのが現実です。とりわけスポーツのコストは高く、ESPNについては1契約あたり月9.42ドルをCATV業者から徴収していると推定されています。今後もNFL、NBA、カレッジスポーツなどで大型契約が続出すれば、この金額はさらに上がっていくことになります。


ディズニーはESPNの経営のテコ入れを進めており、従業員をカットするほか、パートナーとなる企業を探しているとされ。候補にはAppleやAmazonもあがっています。もしネット企業と組むのであれば、ESPN+だけでなく、本体であるESPNのチャンネルも直接消費者に販売することになるのですが、その場合の料金設定は月20~35ドルの間になるのではと推定されているそうです。

つまり、ESPNが現在の料金を維持できているのは、スポーツをあまり見ていない層の人たちもCATVを通じて料金を負担しているからに他なりません。直接販売すれば、当然ながら料金は上がることになります。CATVのビジネスモデルが崩壊することは、ネット企業にとって追い風のように見えますが、その裏では自分の首を絞めているとも言えます。


似たようなことは、いわゆるサブスクのビジネスモデル全般に言えることでしょう。「払いたいものにしか払いたくない」というのは消費者心理としては当然なのですが、それを突き詰めるとコストがどんどん高くなります。お互いが払いたくないものについても負担し合っているからこそ成り立つわけで、そのバランスが崩れるとビジネスモデルは崩壊します。


今後、放映権料がさらに高騰すれば、スポーツそのものに対する反感が高まることも充分に予想されるわけです。際限のない金儲け合戦は、どこかでしっぺ返しを食らうことになります。

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