DAZNとJリーグ・AFCの放映権料を再整理。

DAZNが発表した3年連続の値上げによって、DAZNがどれだけのコストを費やしているのかが改めて注目されることになります。とくにJリーグの放映権料が大きな負担になっていることは明らかなのですが、雑な議論も多いようなので、いま一度整理することにします。


まず、Jリーグが発表している財務資料より「公衆送信権料収益」の金額をリストアップします。この金額にはDAZNからの放映権料だけでなく、NHKやローカル局での放送分や、ルヴァン杯(フジテレビ/スカパー)、スーパーカップ(日本テレビ)、そして海外からの放映権料も含まれます。


  • 2016年度: 5,050(百万円) ※スカパーとの契約最終年
  • 2017年度: 17,804 ※DAZNとの契約初年度
  • 2018年度: 17,787
  • 2019年度: 17,794
  • 2020年度: 19,942
  • 2021年度: 18,612 ※契約見直し
  • 2022年度: 19,404
  • 2023年度(決算見込): 19,402 ※2度目の契約見直し
  • 2024年度(予算): 20,857


年間200億円程度とよく言われていますが、実際のところこれまで200億円を超えたことはありません。しかし、2024年度に初めて200億円を超える予算が組まれました。おそらく海外放映権料が円安の恩恵を受けることが大きいと思われます。


2016年に結ばれた最初の契約は、2017~26年の10年契約で総額2,100億円というものでした。1年あたりでは210億円となりますが、均等ではなく徐々に金額が上がる契約内容であり、最初の3年間は160億円だったと推定されています。


2019年12月の記事では、2020年から放映権料が25億円増額され、また2022年からはさらに16億円増額される見込みだと記されています。つまり、契約4年目にあたる2020年からは185億円、2022年からは201億円になる予定でした。

実際、2020年の公衆送信権料収益は前年比+22億円となっており、この推定はおおむね正しいものと思われますが、この年にコロナ禍が発生しリーグは中断。DAZNも経営危機に陥り、ご存知の通り欧州CLの放映権を途中解約する事態に発展します。


この時期、DAZNとJリーグの間では放映権料の減額交渉も行われていたと伝えられていますが、結果としては契約内容を見直すことで決着しました。

見直された契約は、2017~28年の12年契約で総額2,239億円というものです。ただし、4年間で推定665億円が支払い済みのため、実際は残り8年で1,574億円となります。1年あたりでは196億円となり、最初の210億円から下がっています。


この際、ユーザー数の目標値を定め、それを上回った分は両者で分配するレベニューシェアの契約が盛り込まれていますが、実際には目標に達したことはないと考えられます。2021年の公衆送信権料収益は前年比-13億円ですので、DAZNからの支払額は170億円程度になったものと推定されます。


2023年には2回目の契約見直しが行われました。 2023~33年の11年契約で総額2,395億円となっています。


この契約ではJ3が対象から外されたことが大きなポイントなのですが、金額においてもレベニューシェアの条件が見直されています。詳細は発表されておらず「より柔軟なスキーム」という表現にとどまっていますが、今回の2,395億円という金額はレベニューシェア分を含んだ「最大」だとのこと。従来の契約は「最低」だったので、扱いが大きく変わっています。


1年あたり217億円という計算にはなりますが、過去の推移や今年度の予算を踏まえても、実際には200億円を下回るものと考えられ、今後Jリーグの人気がさらに伸びていかないことには放映権料の増加も期待できないことになります。

さて、話を変えまして、現在アジアカップが開催中ということでDAZNとAFCの放映権料についても触れておきます。過去に検証した記事を書いたのですが、以下の情報より、4年間で72億円という推定が成り立ちます。なお、ACLについてはこの契約に含まれません。


  • 前回のサイクル(2017-20年)において、テレビ朝日が支払った放映権料は180億円と推定
  • 今回のサイクル(2021-24年)において、放映権料は60%減少した


ただし、円安の影響で実際の支払額はもっと上がっていると考えられます。また、DAZNとAFCの契約は2028年までの8年契約ですので、実際の契約額はこの倍以上となります。

テレビ朝日がDAZNに支払うサブライセンス料ですが、2022年のワールドカップ最終予選では「1試合3~5億円」と推定されています。もし、今回もこれと同等だと仮定した場合、日本が決勝まで進出すれば4試合が中継されるため、DAZNには12~20億円が入ることになります。

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