SPOTV NOWとプレミアリーグのこれまでの経緯
本日お昼に速報でお知らせした通り、SPOTV NOWはプレミアリーグの放映権契約を終了したと発表しています。2022-23シーズンから3年契約を結び、1年を残したところで突然の終了となりました。
発表当日にコンテンツも消えるというのは異例のことで、完全に契約そのものがなくなることを意味します。こういう場合、通常であればすでに来シーズンの引き取り先は見つかっているものと考えたいところですが、現時点で他社からの発表はありません。発表があれば速やかにお知らせします。
日本におけるプレミアリーグの放映権料については、過去に調べたことがありますのでそちらを再掲します。SPOTV NOWが支払う放映権料は3年間で8,000万ドル(年間2,670万ドル)と推定されています。その前のDAZNは年間1,800万ドルという推定でした。
SPOTV NOWは入札によって放映権を獲得しています。DAZNが参加していたかは定かではありませんが、少なくとも前回のDAZN以上の条件を提示したことは確かです。DAZNが出せなかった金額を提示した以上、SPOTV NOWにはDAZNを上回るビジネスモデルを提示する必要があったと言えます。
円安という強い逆風は想定外だったでしょう。実際にはドルではなくポンド建てなのかもしれませんが、それでも影響を受けたことは否めません。ただ、SPOTV NOWがこの2年間で行ってきたことで、目立つのはABEMAへのサブライセンス程度です。これ自体も、目先の収入は得られる一方で、SPOTV自身の加入につながったかどうかは検証する必要があるでしょう。
よって、急激な円安はかわいそうではあるものの、基本的には自滅という結論になります。
契約1年目の途中でU-NEXTと提携し「SPOTV NOWパック」の販売を開始。当初は月額1,200円で、U-NEXTが毎月進呈しているポイントの範囲で視聴できるものでしたが、2年目に入ると2,000円に値上げされています。
当時自分が書いた記事を読み返すと、こんな一文がありました。自前のプラットフォームを維持するよりもU-NEXTに合流したほうがいいのでは・・・というものです。その先には、もしSPOTVの経営が傾いたらU-NEXTが買収することも含みに持たせていました。今回、SPOTV自体はまだ撤退しないと発表していますが、まぁまぁいい読みだったのでは。
コスト削減のためには、自社サービスを捨ててすべてU-NEXTに移行させてしまうという選択肢も考えられます。
今年5月には、プレミアリーグの次期放映権の入札が実施され、U-NEXTが勝利したのではないかと報じられています。SportBusinessは前回SPOTVが勝利したときもいち早く報じていましたので、かなり信憑性は高いものとみてよいかと思います。
この入札は、3年前と比べて約8か月ほど前倒しで実施されています。そうなったのは、2024-25シーズン以降のFAカップとセットで入札を行うためです。この前倒しもSPOTVにとって不利に働いたことでしょう。まだ2シーズン目の途中なのに、その次のことを考えねばなりません。そして、結果的に敗れ去ったことになります。
この時点では、まだSPOTVは来シーズンも全試合配信すると発表しています。いまは削除されてしまったので証拠は残ってないのですが、少なくとも3年契約を最後まで全うする意志は示していました。しかし、2025-26シーズン以降の見通しが立たなくなり、経営計画を大幅に変更せざるを得なくなりました。
ここからSPOTVの迷走が始まります。まずは「SPOTV NOWパック」の終了を一方的に発表しました。U-NEXTは困惑の顔を隠していません。そして、8月から再度の料金値上げを発表しています。もっとも、値上げ自体は予定通りの行動だとは思いますが、もともと3年間では黒字転換できず、次のサイクルの権利獲得が前提の計画だったのかもしれません。
今回の契約終了は「当事者間の協議により」と説明されています。その前には「権利者との契約」という文言もあり、「当事者」と「権利者」という言葉が使い分けられていることが分かります。つまり、当事者とは権利者(=プレミアリーグ)だけではなく、他にもいるということです。
今回の入札は代理店を通さず、プレミアリーグが直接実施していますので、当事者とは代理店ではありません。そうなると考えられるのは、今シーズンまでサブライセンス契約を結んでいたABEMA、そして次期権利者と報じられているU-NEXTではないかと考えられます。さすがに1年限定で他社が割り込んでくるというのは考えにくいところです。
ですから、来シーズンの権利をどうするかについていったん話し合いがもたれたのではないか。その結論が出たので、即日契約を終了することにしたのではないか・・・というのが現在の仮説です。新しい業者がSPOTVと同額を出すとは考えにくく、もしディスカウントが行われているとすれば、プレミア側も泣くことになります。
この仮説が正しければ、遅くとも今週中には次の権利者が発表されるものと思われます。もしなかなか発表されなかったら、さらに複雑な事態になっていると思ってください。
最後に、SPOTVがDAZNから放映権を奪取したときの経緯を以前まとめていますので、こちらもあわせて再掲します。奪った者はいつか奪われる運命にあるのです。
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