SPOTV→U-NEXT即日発表の衝撃と、DAZNとの対比
SPOTV NOWがプレミアリーグの放映権契約を終了すると発表し、当日夜にU-NEXTがそれを引き継ぐ形で新たな契約を発表したというのは、なかなか衝撃的な出来事でした。いっそのこと同時にプレスリリースを出せばよかったのでは・・・と思うほどですが、そうしなかったのは両社の間に横たわる重い空気ゆえでしょうか。
この件について、SPOTV NOWに思わぬ評価が寄せられています。「事前に発表しただけえらい」というものです。これは、DAZNが以前に起こしたいわゆる「サイレント」を念頭に置いたものです。自ら放映権契約の終了を発表せず、他社の発表やマスコミの報道があってそれを認める・・・というケースが大きなもので2回ありました。
ひとつは前回のプレミアリーグ放映権(2022年)、そしてもうひとつは欧州CL/EL(2020年)です。改めて、この際の流れについて検証してみましょう。
その前に、今回のプレミアリーグの発表を前に、SPOTV NOWはセリエAとFAカップについても配信終了を事前に発表していたことについて触れておきます。
DAZNが自ら発表しなかった理由として「守秘義務」があげられます。いわゆるNDA(秘密保持契約)においては、契約内容も、契約に至るまでの交渉内容も表に出すことはできません。また、交渉しているか否かも言うことができません。
DAZNはある意味、守秘義務を忠実に守っているからこそ、いつ契約が切れるか(あるいはすでに切れたか)という事実すら公表しなかったと解釈することもできます。これは、外資系企業ならではのフットワークの重さ故かもしれません。何事も本社にお伺いを立てねばならないような組織だと、自ら判断することができなくなります。
それに対してSPOTV NOWは契約が終了することを事前に公表しました。もちろん相手方の許可を得れば公表することはできますし、そもそも継続の見込みがない契約ですから、公表したところでペナルティが科されるわけでもないでしょう。そして、今回のケースも関係者と協議し、合意したうえで発表したわけです。
前回のプレミアリーグの放映権については、以前時系列でまとめました。今回の件についても近々同様に時系列でまとめてみようかと思います。
DAZNユーザーに不信感を与えたのは、2022年1月21日に料金の値上げ(月額1,925→3,000円)を発表したとともに、新たに年間プラン(27,000円)を設定したことです。その1週間後の1月28日には、SportBusinessにより次期放映権の落札者がEclat Media Group(SPOTV NOW)であると報じられています。
このことから、DAZNは次期放映権がないことを知っていたにも関わらず、だんまりを決め込み年間プランに誘導した・・・と言われているわけですね。時系列的には事前に知っていたとは考えにくいですし、値上げの理由は主にJリーグの負担が重いからであって、プレミアリーグのファンを狙い撃ちしたわけではありません。
また、プレミアリーグの放映権は3年契約であることは公表済みであり、2021-22シーズンで終了することは事前に分かっていました。筆者は放映権ウォッチャーなのでよく知っている情報ですが、普通の人にはあまり知られていません。ですから、心情はよく理解できるとしても、公表されている以上は「だんまり」というのは言い過ぎではないかとも思います。
かくして、4月15日にSPOTV NOWが正式発表するまで、DAZNの放映権は今シーズン限りであることは明かされず、発表によってDAZNが認める形となっています。
話はさらにさかのぼり、2020年にDAZNが欧州CL/ELの放映権を手放した件です。先のプレミアは契約満了だったのですが、こちらは契約を1年残しての終了としてことで、こちらのほうが今回のSPOTVのケースに類似しているかと思います。
DAZNが権利を手放した理由は言うまでもなくコロナ禍であり、世界のスポーツがほとんど停止したことで経営的に大ダメージを受けました。その過程で権利を整理する必要があり、日本における欧州CL/ELがその対象となったのです。
もっとも、本当にその必要があったのかは微妙なのですが、当時DAZNは日本以外にアジアでも何か国か権利を持っており、これらはまだDAZNがサービスインしていないためきちんと活用できていませんでした。それらとセットにされる形で日本の権利も失ったのです。
この事実は、10月21日に朝日新聞によって報じられるまで公表されませんでした。すでに2020-21シーズンのプレーオフが開催されており、それをDAZNが配信しなかったため、権利がないことは明らかでしたが、報道によって渋々認める形となったのです。
しばらく日本の権利は宙に浮く形となり、UEFA公式の「UEFA.tv」で一部の試合が配信されるにとどまりました。そして翌年1月、WOWOWが決勝トーナメントから放送すると発表しています。DAZNにしてみれば、もっと早くWOWOWが権利を獲得していれば楽になったのかもしれません。聞かれれば「権利は持っていない」と答えるのですが、自分から公表することはできない。そう思っていたのではないかと想像します。
改めて話を現在に戻すと、7月23日にSPOTV NOWはプレミアリーグとの契約を終了すると発表。その日のうちにすべてのコンテンツを削除しています。あらかじめ段取りを組んだうえで、迅速にそれを実行したことになります。SPOTVとDAZNの違いは、フットワークの軽さと重さであると言ってよいのではと思います。
ただ、両社ともにプレミアリーグのビジネスをきちんと軌道に乗せることができなかったという点では責任から逃れることができません。U-NEXTは当然、二の舞・三の舞とならないように対策をいろいろと練ってくるものと思われます。
7年間のあいだにはいろいろなことが起こるかもしれません。もちろん、さらなる値上げも充分に考えられます。当ブログが7年後まで続いているかと言われたら、たぶん続いてないような気もしますけど、今後も見守っていきましょう。
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