日本のMLB放映権料に新説。

日本からMLBに支払われている放映権料については諸説渦巻いています。昨日とりあげた、関西大学名誉教授の方による試算では、NHKだけで年間125億円としてますが、この数字が独り歩きしてしまっていることは否めません。


先日、経済紙「フォーブス」に掲載された記事に、新しい仮説と言ってよさそうな数字が出ています。Omdiaという調査会社によるもので、年間で推定6,400万ドル(約95億円)というものです。

残念ながら、この記事では具体的に支払っているのは誰かという主語が曖昧になっています。そこで英語版Forbesの原典をあたってみたのですが、残念ながら有料記事となっていました。もちろん日本語の翻訳記事を無料で読めるのはありがたい話なのですが、どうも食い足りません。

Omdiaはイギリスの調査会社であり、informaというメディアグループの傘下に属しています。先日更新を停止した「Digital TV Europe」もinformaの傘下だったので、当ブログでも取り上げたことがあります。少なくとも放送・通信業界においてはきちんとした調査であろうと考えていますが、OmdiaのWebサイトにもこれといったレポートは掲載されていないため、どうにも数字の裏付けがとれません。

文脈からして、勝手に主語を補うと「日本全体」ではないかと考えられます。つまり、NHKだけでなく各社が支払っている金額の合計です。


MLBの日本における放映権は電通が契約しており、NHKや民放局に販売されています。また、インターネットの権利は「SPOTV NOW」を運営する韓国のEclat Media Group(エイクラと読みます)に販売されており、さらにABEMAがサブライセンスを購入しています。


こちらで分かっている最新の数字は、2020年までの契約で年間6,200万ドルというものです。現在の契約は2028年までという説がありますが、もし6,400万ドルという数字が正しいとすれば、ほとんど値上がりしていないことになります。円安が急速に進んだため、日本円でみると高くはなっていますが、それでも今後しばらく「大谷特需」の恩恵を受けられそうです。


ただ、もしこの金額が電通とMLBとの契約額だと仮定するならば、そこから各社に販売する際にはマージンを乗せているはずなので、実際にはここから15~20%程度高くなっている可能性もあります。残念ながらそのあたりが記事では曖昧になっています。

ちなみにMLBの放映権料全体でいうと、全米向けと海外向けをあわせて約20億ドル、さらにローカル向けも約20億ドルの市場が存在しており、全体で40億ドル相当に達します。ただ、ローカルに関してFanDuel Sports(旧Bally Sports)の破綻によって揺らいでいることは当ブログでも幾度となくお伝えしています。


また、ESPNとの契約(年間5.5億ドルと推定)については、早期に解除できるオプトアウト条項が存在しており、それを行使するのではという説が囁かれています。この場合、放映権料が減額となる可能性もありますし、あるいは完全に他社に移動するといった可能性も考えられますので、今後の動向を注視していく必要があります。

最後にひとつ補足ですが、Eclat Media GroupはWebサイト「MLB.JP」の運営も担当しています。利用規約をみてみると、日本でSPOTV NOWを運営している株式会社LIVE SPORTS MEDIAの名前が表記されています。もっとも、現在は社名変更して株式会社SPOTV JAPANになっていますので、そこは早く直して頂きたいところですが。

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