将棋・王将戦、毎日新聞らが主催から撤退。
1月12日から七番勝負が始まる将棋の王将戦は、藤井聡太王将(七冠)に永瀬拓矢九段が挑戦します。七番勝負と並行して来期(第75期)の予選が始まるのですが、来期の運営体制が変更されると発表がありました。
今期までは日本将棋連盟・毎日新聞・スポニチの三者が主催していましたが、来期は日本将棋連盟が単独で主催することとなり、毎日新聞とスポニチは「特別協力」という立場に変更されます。
今後の分かりやすい変化としては、両社がお金を出さなくなるということです。来期については賞金額の減額はないとしていますが、そこから先は新たなスポンサーの獲得しだいとなります。
王将戦の名物として、通称「罰ゲーム」とも呼ばれている勝者の記念撮影がありますが、両社は引き続き報道では関わるとのことなので、それがなくなることはあまり心配しなくてもよいかと思います。その予算すら出ないという話なら別ですが。
長年新聞社によって支えられてきた将棋界ですが、オールドメディアの体力が弱くなっていることは明白です。毎日新聞は、2023年に囲碁・本因坊戦の規模を縮小しています。こちらは主催から撤退したわけではないのですが、同様の動きが将棋界にも起こることは時間の問題でした。
また、毎日新聞社は名人戦を朝日新聞社と共同で主催しており、それについては現時点では残るものと考えられますが、こちらも今後動きがあるかもしれません。こうなっているのも長い歴史がゆえの複雑さなのですが、説明すると長くなるので省略します。ただ、この複雑な構図は長期的には整理されていくのでしょう。
毎日新聞の記事によると、今回の経緯を以下のように説明しています。スポニチ側も毎日との順番を入れ替えただけで、同じ内容を発表しています。
将棋連盟から毎日・スポニチ両社に対し、王将戦をより一層発展させるため主体的に運営したいと申し出があり、合意した。
将棋連盟側から申し出たという筋立てになっていますが、これは両社を立てるための方便かな・・・と思う一方で、結構本質を突くな内容ではないかとも感じています。
当ブログらしく他の競技の話をしますと、ゴルフのJLPGAは2027年までにツアーの試合をすべてJLPGAが自ら主催する形に変えようとしています。今年から開催される「明治安田レディスゴルフトーナメント」はJLPGAが主催し、明治安田生命は「特別協賛」となっています。特別協賛というのは、要するにいちばんお金を出している冠スポンサーということですね。
「主催」という肩書の持つ意味は競技によってさまざまで、実際の運営はほぼ外部に委託している場合もあります。将棋の棋戦の多くは新聞社によって創設されたという歴史的経緯がありますが、現在は事務仕事の多くを同じく主催である日本将棋連盟が担っていると考えられます。ただ、長い歴史をふまえるとまだまだ毎日新聞とスポニチが担っているところも多そうで、お金だけでなく責任という意味でも肩の荷が軽くなります。
統括団体が単独で主催するというのは、自らがリスクを負う代わりに、リターンも得るということです。自ら理念や価値観を提示し、それに共感して頂いた企業がスポンサーになってもらうという形は、プロスポーツにおいて健全であろうと思います。
とくに将棋では、各棋戦ごとに棋譜の取り扱いに関するガイドラインが異なっているといった問題があり、昨年は「評価値放送」をめぐる訴訟も起きています。こういった煩雑な部分を日本将棋連盟が自ら引き受けるというのは、ある意味積極的な姿勢ではないかと評価します。
王将戦はALSOKが特別協賛となっており、現時点では来期も継続する見込みです。その他にも何社かスポンサーが増えてくれば、新聞社への依存を大きく減らすことができます。他の棋戦においても入れ替わりが進むことでしょう。また、スポンサー以外の収入源確保についても議論が進むことを期待します。
王将戦は「囲碁・将棋チャンネル」が協賛していることから、唯一ABEMAでは無料で配信されない棋戦としても知られています。ABEMAではPPVでの配信となります。1局500円で、プレミアム会員は半額キャッシュバックされるとのことです。(広告付きプランは対象外)
ABEMAは昨年広告付きプランの提供を開始して以来、プレミアム会員限定の配信をまた増やしつつあります。将来的なことを考えると、他のタイトルについても有料化していく動きが生じるかもしれません。また、独自の大会である「ABEMAトーナメント」や「地域対抗戦」を持っていますので、これらをどう活用するかも注目要素となります。
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