ピントが合ってない「週プレ」記事を補正する

本日は「週プレNEWS」に掲載された以下の記事についてです。全体を通して、点が線としてつながっていないという印象を受けましたので、当ブログなりに解読してみようという趣旨になります。


この記事はいわゆる「オールドメディア」の落日について書いたものと理解しています。冒頭には新聞の話が出てきますが、正直この枕はあまり意味がなく、本筋である日本のテレビ局、そしてスポーツ放映権の話に絞ったほうがよいのではと感じました。

見出しにある「買い負け」という表現がそもそも気になります。買い負けというのは、海外業者がより高値で買い付けることで日本市場にモノが入ってこなくなることを言いますが、そもそも放映権は基本的に国単位で販売されるものなので、日本向けの権利を買えば、それが誰であっても日本で視聴できます。


従来国内のテレビ局が持っていた放映権が外資系に移動することをもって「買い負け」と表現しているようですが、視聴者からしてみれば視聴できればよいのであって、あまりぴんと来ない話です。もちろん、ABEMAやU-NEXTなど国内勢も頑張っていますが、やはりテレビに頑張ってほしいということでしょうか。


週プレNEWSの読者層は20代男性がもっとも多く、30~50代に広がっているとのことですが、テレビで観られなくなることを問題にするのはもっと高齢者の層というイメージです。もちろんWebですからもっと広い層を意識してるでしょうけど、あんまり刺さるテーマではないかと。

さて、本題である「放映権料の高騰」なのですが、これは世界的な傾向であり、日本だけで語れる話ではありません。この記事では「DAZNの市場参入」を理由に掲げていますが、DAZNに限らず配信サービスの参入によって競争相手が増えているのが主要因です。そこに日本特有の事情である円安と、物価高についていけないという要素が加わるため、日本はさらに苦しくなっているというわけです。


これらの象徴として、昨年11月、サッカーW杯最終予選をDAZNが無料配信したことをあげているのですが・・・これを例にあげるのはどうかという感じです。JFAがDAZNにお願いして実現したというのは表向きでも公表されている話ですが、内情としてはDAZNも結構苦しいのが現実であり、少々DAZNを過剰に評価している感があります。

関係者によると、件のW杯最終予選の放映権料は、その試合の重要性によって価格設定がされており、アウェーでの試合を差配している「アジアサッカー連盟」(AFC)が、「アウェーでも1試合で3~5億円」という強気の提示をしてきたのがそもそもの発端。


最終予選の放映権はホーム・アウェー関係なくAFCの管轄であり、DAZNは2021年からの8年契約でまとめて購入しています。「試合の重要性によって価格設定がされる」というのは、JFAが主催する日本代表戦の話と混同しているように思われます。


1試合で3~5億円」というのは、日本のホーム開催試合においてDAZNがテレビ朝日にサブライセンスする金額のことでしょう。実際の金額は不明ですが、そのように書いてある記事は以前見たことがあります。

「潤沢なオイルマネーを有するサウジアラビアの国営ファンドが10億ドル(約1100億円)の融資を検討したことも話題になりましたが、その影響力はすでに日本でも顕著で、すでにプロ野球11球団が契約している。1球団当たりの契約料は10億から15億円とも言われている。唯一、契約していないのが広島カープで、地元密着を掲げる球団らしく『地上波での生中継が減るのはありえない』として地方球団の意地を見せています」


このあたりの記述も微妙なところです。サウジの投資ファンド・PIFはDAZNの株式10%を取得することを検討していると報じられています。これは投資であって「融資」ではありません。


DAZNが広島カープと契約できていないことは事実ですが、DAZNの影響力が「顕著」であるという記述といささか矛盾しています。本当に顕著であれば広島も軍門に下るしかないと思うのですが、これまでDAZNが12球団をコンプリートできた年はありません。

1球団当たりの契約料は10億から15億円」という記載には正直驚きました。いままで、そういう記述をしたメディアは私の記憶にはありません。もしかしたら独自情報なのでしょうか。この記事のライターは「高倉仁作」さんという方ですが、この週プレNEWS以外では見当たらない名前であり、どんなプロフィールの方なのか大いに気になります。


ちなみにパ・リーグ6球団はPLM社と一括で契約していますが、PLM社の年間の売上高は約60億円とのこと。もちろんDAZN以外とも取引してますし、自ら「パ・リーグTV」も運営してますから、DAZNの支払額はもっと下がります。ですから、セ・リーグの5球団が平均を大きく押し上げていることになりますが・・・信じていいんですかね。

2022年、MLBは米国で全国ネットの主要テレビ局(FOX、ESPN、TBSなど)と、7年17億6000万ドル(約2260億円)という大型契約を結んでいる。日本勢はNHK、民放合わせてMLB側に年間推定6400万ドル(約95億円)を支払っているとされるが、それとは比較にならないほどの札束攻勢を仕掛けているのだ。


この部分はなかなか面白いです。というのも、日本におけるMLBの放映権料について「6,400万ドル」と記載しているのは、以下にあげるForbes JAPANの記事くらいしか見当たらないのです。関西大学名誉教授の方が試算した「125億円」という数字のほうがよく使われるのですが、これはあくまで試算の数字であり、信憑性に乏しいと考えています。


たまたま検索で引っかかった記事がForbesだったのかもしれませんが、結果的により確度が高そうな情報を引用していることになります。ただ、Forbesの記事ではアメリカ国内(ローカル除く)の放映権料は17億ドルと書いてあるのですが、今回の記事では17億6,000万ドルとなってるんですよね。

これは17億6,000万ドルのほうが正確で、2023年12月の日経新聞などがそう書いています。日経新聞の引用元は英語版のForbesなので、実はForbes JAPANではなく原典のほうにあたっている可能性も考えられます。


Forbes JAPANは端数をはしょっていますが、もしライターさんがここしか見てなかったら17億ドルと書いていたはず。適当なように見えて、ここはきちんと調べているようです。

つらつらと書きましたが、全体的にはいろいろと調べているとは思うものの、情報には誤りが結構見られます。また、NHKを公共放送ではなく「国営放送」と表現しているのも気になりました。


その一方で鋭い部分も感じました。おそらく、得意分野では私のような「こたつ記者」にはない情報をお持ちの方であり、諸事情で他では使わないペンネームで書かれているのでは・・・などと妄想が膨らみます。


しかし、放映権ビジネスの流れについて理解が不足していることから、結果ピンボケな記事になったのではと考えます。もう少し丁寧に料理すれば、もっとすばらしい記事になったのではないかと。惜しいです。個人的には、私と組んだらいいのではと(笑)。高倉さん、連絡お待ちしております。

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