【FRIDAY】2026W杯の放映権料は400億円超え?

どう取り扱っていいのかよく分からない記事です。「FRIDAYデジタル」によると、2026年のFIFAワールドカップについて、日本国内の放映権料が「過去最高の総額400億円超えになることが確実な情勢」だと書いているのですが、どうして400億円超えになるのか、その理由が全然書かれていないのです。


その前にひとつ突っ込んでおくと、今回の最終予選がDAZN独占配信になったことを初めてであるかのように書いていますが、前回の最終予選もそうでした。

前回の2022年カタール大会の放映権料が「350億円」であり、今回はそれを上回るであろうという推測だと考えられますが、この350億円という数字を出しているのは、筆者の知る限り当のFRIDAYだけです。他のメディアでは「180~200数十億円」という論調になっています。


ちなみに「過去最高」と書いていますが、さらに前の2018年ロシア大会については「600億円」と報じたメディアもあったりします。これも、実際にはもっと低い金額であり300億円程度ではないかとも言われています。

FRIDAYだけ突出しているのは、それだけ取材に自信があるからだ・・・と解釈してあげたいところです。もちろん筆者も自分で取材しているわけではなく、無料で得られる情報をピックアップしただけであり、なにが正しいと断言できる立場ではありません。


しかし、ABEMAを運営するサイバーエージェントの決算情報によると、ワールドカップが開催された時期(2023第一四半期)における収入は前期との比較で+32億円、収益は-67億円となっており、足し合わせると100億円程度の追加支出があったことが分かります。

FRIDAYの記事では、ABEMAが「200億円超」を負担したという記述がありますが、この数字と辻褄が合いませんので、信憑性はどうしても薄れます。日経新聞は、大手証券アナリストのコメントとして放映権料を「70~80億円」と推定する記事を出しています。


ただ、NHKの負担額「90億円」については他のメディアにも同様の記述がありましたので、これだけは信憑性が高いかもしれません。NHKが90億円、民放(フジ&テレ朝)が計60億円、そしてABEMAが70~80億円と推定するならば、総額は220~230億円となり、他のメディアとの辻褄が結構合ってくるのですが。

最近の話題では、FIFAが電通を外し、博報堂と交渉を行っているのではないか・・・というものがありました。FIFAは電通のパフォーマンスに不満を持っているとされ、カタール大会の放映権料が「過去最高」だったとすれば矛盾が生じます。


もっとも、FIFAは電通以外にも代理店を外し、直販モデルへの切り替えを進めていますので、単にFIFAが強欲なだけという気もしますけどね。

さて、数字の話はともかく、前回以上に状況が厳しくなっていることは確かです。物価高・円安が進んでいること。前回放映権を獲得したフジテレビが苦境に陥っていることは確かであり、NHKも民放各局も余裕はありません。時差の問題も大きく、日本戦など一部の試合は無料放送が残るとしても、基本的には配信中心と考えるべきでしょう。


前回のABEMAのように、赤字覚悟で短期にシェアを取りに行く目的がある業者が出てくればよいのですが、なかなかそういった業者も見当たりません。当のABEMAは単月黒字化を達成し、再度大型投資を行う意味が薄れています。


日経新聞に掲載されたU-NEXTとAmazonのインタビューでは、U-NEXTは現在提供しているサッカーパックがすでに黒字化しているとのことで、ワールドカップには慎重な姿勢です。Amazonについては「ご縁があれば色々やる」と含みを持たせた言い方をしていますが、すでに十分なシェアを持っている中でどこまで踏み込めるかは疑問です。

Amazonに可能性を見い出すとすれば、広告収入でしょう。4月からプライムビデオでCMが表示されるようになりました。追加料金で広告なしのプランも選べますが、スポーツ中継においてはそもそもCMを入れる前提でフォーマットが組まれていますので、これまでもCMが入っていましたし、今後もプランと関係なく入れてくるのではないでしょうか。


広告媒体としてのAmazonの価値に注目が集まり、実際にある程度スポンサーが集まるめどが立つのであれば、ワールドカップに巨額の投資を行う大義名分が成り立ちます。来年3月にはWBCが開催されますので、もしAmazonが前回と同様にWBCの放映権を獲得すれば絶好のテストケースにもなります。

ダークホースとなるのは、先日新たなパートナーシップを締結したドコモ+DAZN連合でしょうか。DAZNにはかつての資金力はもうありませんが、ドコモの協力を得られるのであれば再チャレンジの可能性も出てくるでしょう。提携のねらいには広告価値の向上が含まれており、上述したAmazonと似た事情を抱えています。


DAZNにとっては6月にはクラブワールドカップの配信、そして「FIFA+」との統合も予定されています。FIFAとのパイプが太くなるに越したことはありません。


いずれにせよ、FIFAが目論む放映権料のつり上げに簡単に応じる必要はありません。長期戦になることを覚悟する必要があります。と、書いた途端にあっさり発表されるかもしれませんので、その場合は私が恥をかいたということで。

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