「ESPN」新ストリーミングは月額$29.99に。

ESPNは、以前「Flagship」というコードネームで呼ばれていたストリーミングサービスについて、月額料金を29.99ドル(年額299.99ドル)に設定すると発表しました。サービス名称は単に「ESPN」となり、それ以上の文言はつきません。NFLのシーズンが開幕する9月初旬までにはリリース予定です。


「ESPN」は従来CATVなどで提供してきたリニアチャンネルを、ストリーミングを通じて視聴者に直販するサービスであり、「ESPN+」として提供してきたストリーミング専用コンテンツも合流します。ESPN+は「セレクトプラン」として継続。料金は1ドル値上げされて月額11.99ドル(年額119.99ドル)となります。

各種メディアは25~30ドルと予想していたのでその上限での設定となりましたが、同じディズニー傘下のサービスであるdisney+、そしてHuluとのセットプランを提供することで割安感を出そうとしています。


ESPN・disney+・Hulu(広告付きブラン)とのセットは月額35.99ドルで、さらにサービス提供開始から1年間は29.99ドルに値引きするとしていますので、「ESPN」を契約すると実質的にタダでついてくる形となります。

CATVの契約者数が減少していく中、ESPNも直販へと舵を切らざるを得なくなったわけですが、かと言ってあまり安い価格設定にしてしまうと、独占禁止法で刺される恐れがあります。今回発表された29.99ドルから、旧ESPN+の11.99ドルを差し引くと、リニアチャンネルの価値は月額18ドルとなりますが、この金額は果たして妥当なのかどうか。


ESPNはCATVなどの業者から1契約あたり月10ドル程度の収入を得ているとされます。以下に紹介するWebサイトは、2019年の時点でとあるvMVPD(ストリーミングを通じてCATVと同様にリニアチャンネルを提供する業者)が各チャンネルに支払っているとされる金額をまとめたものですが、ESPNの名がつく5つのチャンネルの合計が8.36ドルとなっています。


そのうちESPN Classicは終了していますが、その後の放映権料の高騰や物価上昇をふまえると、確かに10ドル程度は徴収しているものと考えられます。業者はそこから利益分を上乗せする必要がありますが、「ESPN」は直販モデルで18ドル。安いとは言えないけど、高くもないのかなぁ・・・と思います。ただ、セット割引は結構えぐい感じもしますが。

CATVなどの契約者から徴収していた金額は、必ずしもスポーツを熱心に観ていた人たちから集めたものではありません。しかし、直販の「ESPN」は基本的にスポーツに関心がある人が対象となりますので、価格設定は若干高くせざるを得ません。


すでにCATVや上述のvMVPDの契約者からは、高いスポーツチャンネルを外したシンプルなプランが求められており、いくつかの業者が提供しています。物価高も急速に進み、消費者としても余計なコンテンツにお金を払いたくないのは当然です。そんな流れなので、ESPNとしてはビジネスモデルを見直さざるを得なくなったわけですが、同時にスポーツコンテンツがいかに高いものかが改めて浮き彫りになった出来事とも言えます。


ESPNの狙いについては「アメリカメディアウォッチ」さんが詳しく解説されています。いつも丁寧な記事をありがとうございます。

あとは、サービス開始までにコンテンツのラインアップがどうなるかですね。NBAは2025-26シーズンから新たな契約を結びましたが、その一方でMLBとは今シーズン限りで契約を打ち切ることが決定。更新時期を迎えているF1、UFC、ボクシングのトップランクなども終了する可能性が高くなっています。


今後どんなラインアップが構築されるかは、都度こちらでもお伝えしていく予定です。

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