海賊放送に屈した?BeIN、F1の放映権を手放す。

カタールのBeIN Sportsが保有するMENA(中東・北アフリカ)向けのF1放映権について、更新しない方針を決めたとのこと。
以前にもお伝えしたように、カタールはサウジアラビアやUAEなどの周辺諸国と国交断絶状態にあり、またBeIN Sportsの映像を勝手に流す海賊放送局「beoutQ」が登場。
周辺諸国は国交回復の条件としてカタールのニュース専門局「アルジャジーラ」の閉鎖を要求。もともとアルジャジーラから分離した経緯を持つBeINはいわば嫌がらせの標的となっている。


今回の決定はF1だけでなく放映権の所有者である競技団体の利益を損ねないための措置であり、beoutQに対しては他の団体とも協力して徹底抗戦していく構えではあるが、いわばテロリストの圧力に屈した形。

さて、得られるはずだった放映権料を失う形となるF1だが、自前のOTTサービス「F1 TV Pro」のサービス提供地域を着々と拡大中。昨年の時点で59地域、今年はさらに8地域が加わり計67地域になるとのこと。
なので一時的にBeINに放映権を販売できなくなっても、カバーする手段は残されている。むしろ好都合と思っているのかも。
日本においてはまだサービスは提供されていない。現在アジア向けの放映権は2022年までFOXスポーツアジアが保有しており、途中で契約条件の変更がない限りはしばらく現在の状況が続くと考えられる。

現在F1を運営しているリバティメディア社は無料放送・有料放送・ネット配信を使い分けることで収益の最大化をはかっている。これは他のスポーツでも行われているトレンドでもある。
しかし、長期的な視点でファンを獲得する視点を見失えば、やがて競技そのものが没落することにもなる。

ということで、レースを主催するプロモーターたちがリバティ社を批判する声明を出した。
もともとリバティ社がF1運営会社を買収する前からいろいろと問題はあった。まずレース数自体が増えた。
新たに追加されるレースはお金がある新興国が多く、伝統あるコースは開催が厳しい状況に追い込まれている。鈴鹿での開催が危機に陥ったことはつい最近の出来事。

もちろんリバティ社によって改善された面もあり、中継技術は格段に向上したと言える。レース自体も以前よりは退屈にはならなくなったと思う。

F1の魅力とは何か?もちろん人それぞれに答えがあると思うけど、今年で70年目を迎える歴史の重みは大きい。ドライバーの安全確保が最優先なのは当然だけど、個性あるレイアウトのコースも欲しい。鈴鹿・スパ・モンツァなどが愛される理由はそこにある。

リバティ社がF1を売却するのでは?という憶測も出たりしてるけど、誰が運営するにせよ、長期的な視点を失えばF1は沈む。いや、すでに沈みかけているのかもしれない。
もはや巨大な利権組織になったF1は自らを変えることができるのか。いま改めて問われている。


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