Netflix、WBCサブライセンスの可能性は?

NPB(日本野球機構)の理事会で、WBCの放映権をNetflixが獲得した件について取り上げられたとのこと。NPBには事前通告があったとのことですが、裏を返せば一方的な通告であり、交渉の余地はなかったことになります。


ここではスポニチの記事を取り上げることにしたのですが、中村勝彦事務局長の「権利関係がはっきりしてる案件」というコメントを引き出していたのが理由です。理事会としては、無料での放送・配信を主催者側に働きかけていきたいとしていますが、実際にできることには限りがあるというのも現実です。


あと、これらの報道をひと通り見ても「電通」の2文字がまったく出てきません。こうなると、今回の取引において「電通外し」が行われた疑いがだんだん強まってきます。交渉の舞台裏について今後取材するメディアが出てくることを期待します。

では、実際にNetflixが地上波にサブライセンスを出したり、自らの配信を無料化したりする可能性はあるのでしょうか。筆者の個人的な予想としては、日本戦の1試合程度であれば無料配信になる可能性はあると考えますが、サブライセンスについては望み薄といったところです。


以前から述べている通り、Netflixのライブイベントには契約プランに関わらずCMが挿入されており、WBCにおいてもそうなるものと想定されます。ただ、CMの件について触れているメディアはごくわずかです。


筆者が現時点で見つけたのは「東洋経済オンライン」に掲載された2本の記事で、いずれも外部のジャーナリストの方からの寄稿です。一人目はメディアジャーナリストの長谷川朋子氏、二人目はアメリカ在住の映画ジャーナリスト・猿渡由紀氏です。

二人とも、今回の契約の背景にはNetflixの広告ビジネスが絡んでいることを指摘しています。要するに、スポーツ系のジャーナリストできちんと理解している人は少なく、Netflixについて語るには放送・通信・エンタメからのアプローチが必要だということです。

私も十分に理解しているわけではありませんが、Netflixは日本市場においても広告事業を拡大したいと考えており、WBCはタイミング的にもばっちりなコンテンツだと言えます。今回の発表の数日前にあたる8月21日には、マーケティングを扱うメディア「MarkeZine」に日本の広告事業担当者のインタビューが掲載されていました。


この点をふまえると、わざわざ広告の売上を外部にくれてやることになるサブライセンスについては否定的な見方をせざるを得ません。録画中継であればまだ可能性はありますが、ライブについては難しいと思われます。その一方で、広告収入を高めるという観点からみれば、一部の試合を無料配信する可能性は結構あるんじゃないかと感じます。


ひとつ望みをかけるならば、ライブを無料にし、見逃し配信を有料にするという方向性でしょうか。Netflixは、見逃し配信について広告つきプラン以外ではCMを入れない方針を示していますので、CMを多くの人に観てもらう方向に特化するかもしれません。それでも、見逃し配信を目当てにして加入する人はそれなりにいるでしょうから。

サブライセンスと言えば、クラブワールドカップのグローバル放映権を獲得したDAZNは積極的にライセンスを出す戦略をとっていました。放映権料の回収もそうですが、DAZNそのものの知名度を上げたいのと、トラフィックを分散させる狙いもあったと考えられます。


ただ、Netflixは知名度を上げるフェーズはもう過ぎているように思われます。トラフィックについても、昨年のNFLの中継では平均2,700万人、ピーク時には4,000万人を超える視聴者に耐えた実績がありますので、自信を持っているでしょう。DAZNのような戦略をとる意味はありません。

今回発表された契約は日本のみを対象としています。もちろん、WBCの最重要市場が日本であることには間違いないのですが、グローバル指向の強いNetflixにおいては意外なことと言えます。Netflixのビジネスにおける狙いはまだまだ見えてきません。


これには、将来のMLBの放映権獲得に含みを持たせているのでは・・・というのが筆者の妄想ですが、今後他の国にも契約が広がっていく可能性も否定できません。アメリカ国内では引き続きFOXが有力とされていますが、韓国・台湾・中南米あたりの動向は引き続き追っていく必要があります。

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