NFLブラジル開催、YouTube配信のその後。

日本時間9月6日、YouTubeでNFLの公式戦、チーフス@チャージャーズ戦が無料ライブ配信されました。カナダなど一部の国を除いたグローバルが対象となりましたので、アメリカでも、開催国のブラジルでも、そして日本からでも視聴することができました。公式の中継映像のほか、複数のYouTuberを起用した映像も同時に配信され、普段NFLを観ていない層に対しても存分にPRしたようです。


NFLの公式チャンネルで配信されましたが、アーカイブは残っておらず、翌日になってCMをカットしたバージョンがアップされました。ライブ配信中も、いわゆる追っかけ再生はできなかったとのことで、なかなか厳しい制限です。

平均視聴者数は1,730万人と発表されました。アメリカ国内で1,620万人、国外で110万人という内訳です。昨年のブラジル開催(1,420万人)よりも増加しましたが、昨年は有料のPeacockで配信されています。配信限定の試合では、昨年Netflixが配信したクリスマスゲームが国内だけで2,400万人の視聴者を獲得しており、今回の数字はYouTubeにとっては期待外れという評価になるでしょう。


最近ではトラヴィス・ケルシー選手とテイラー・スウィフトの婚約が発表されるなど、まだまだ話題豊富なチーフスではありますが、「飽きられた」と評する声もあるようです。おめでたい話ではありますが、婚約まで進むと材料出尽くし感もあります。

YouTubeはアメリカで"NFL Sunday Ticket"の放映権を保有しており、年間20億ドル程度を支払っているとされますが、今回のライブ配信については追加で1億ドル程度を支払ったとされています。


アメリカ以外では、DAZNを通じて提供されている「NFL Game Pass」でもライブ配信がありましたが、どうやらポルトガル語での配信だったと聞いています。もちろんYouTubeは英語ですから、そちらを観ればよいわけですが。

ブラジルでポルトガル語での配信を行っていたのは、YouTubeチャンネル「CazéTV」です。こちらはなぜかアーカイブが残っていますので、フルで観たい方はこちらを利用するのもひとつの方法です。言語の壁については翻訳機能を利用することになりますが。

「CazéTV」は新興のYouTubeチャンネルですが、サッカーでは大きな放映権を続々と獲得しており、来年のFIFAワールドカップも全試合ライブ配信を行う予定です。ブラジルにおけるNFLの放映権は国内最大の民放局であるGloboが獲得していますが、ブラジル開催の試合については昨年・今年と2年続けてCazéTVが獲得しています。

無料配信ということで、CMは当然流れます。どうやらYouTubeプレミアム会員でもCMが表示されたと聞いています。ライブ配信のコンテンツではそういうことはよくあります。来年WBCの放映権を獲得したNetflixもおそらくそうするでしょう。


筆者は当然ながら日本在住ですが、日本のユーザーに対しては日本国内のスポンサーのCMが流れていました。これは、おそらくユーザーの属性や興味関心に基づいて、流すCMを変えていたものと考えられます。これを専門用語では運用型広告(またはプログラマティック広告)と呼んでいます。


インターネット広告にはもうひとつ予約型広告というものがあります。これは旧来型の広告に近い形で、広告枠を買い取るというものです。スポーツのライブコンテンツで流されるCMはテレビに近い形なので、予約型が多いものと推定されます。そして、この領域はテレビと完全に競合するわけですから、スポンサーの広告予算を奪い合う関係となるわけです。

Google広告のヘルプページによると、"NFL Sunday Ticket"のコンテンツを対象として予約型広告を販売しています。ただし、年代・性別・地域(州)といった大まかな属性についてはターゲティングができるようです。


今回の無料ライブ配信においても、アメリカ国内については同様の仕組みを使っているのかな・・・と推定します。広告の出し方においても壮大な試みであった可能性がありますので、これについては続報を期待したいところです。


そして、同様の試みが来年のWBCにおいても行われることになるものと推測しています。Netflixの狙いは、地上波から放映権を奪うことというよりも、むしろ広告予算を奪うことではないか・・・と考えると、単なる1スポーツにとどまらない脅威が迫っていることになります。

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