日産自動車、マリノスを売却へ。
日産自動車が、横浜・F・マリノスの保有株を売却する方針であると報道されています。すでに複数の企業に対して打診しており、その中には「大手IT企業」が含まれていると報じるメディアもあります。
横浜市に本社を置くIT企業だと、富士ソフト、マクニカ、コーエーテクモといった名前があがりますが・・・いまいちぴんと来ません。旧テクモは「キャプテン翼」を出してましたけど。まぁ、普通に考えればもっとスケールが大きなところでしょうか。
ノジマを候補にあげているメディアもあります。サッカーではWEリーグのノジマステラ神奈川相模原を、またアメフトではノジマ相模原ライズを持っており、神奈川愛の強い企業ではあるのですが、かつてベイスターズ買収に名乗りをあげたものの選ばれなかった企業でもあります。現在もベイスターズのスポンサーとして支えている関係ですが、さてどうするのか。
先日はネーミングライツ契約の終了についても報じられましたので、話は急速に進んでいます。日産はマリノスの運営会社の株式74.58%を保有しているとのことで、残りはシティ・フットボールグループ(CFG)などが保有していますが、CFGの動きもまた注目されることになります。
Jリーグ発足以前から日本サッカー界に多大な貢献をしてきた日産が離れるというのは実にさみしいことではありますが、かと言ってマリノスの歴史が途絶えるわけではありません。プロスポーツにおいてオーナー企業の栄枯盛衰は必然であり、また新たなオーナーによって歴史が引き継がれるものと信じます。
あとは売却金額がどの程度になるかが気になるところです。ここ最近の買収例としては以下があげられます。そもそもプロスポーツクラブは利益があがるものではないですし、かえって追加投資を求められます。ですから、金額は資産価値というよりも、ブランド価値が占める割合が高くなります。
- 2019年: 鹿島アントラーズをメルカリが買収 (61.6%、16億円)
- 2021年: FC東京をミクシィが買収 (51.3%、11.5億円)
- 2024年: 大宮アルディージャをレッドブルが買収 (100%、3億円)
規模的には鹿島がサンプルケースとなりそうですが、割合から逆算すると時価総額は26億円で、そのうちの約75%を買収するので単純計算で19.5億円となります。そこにマリノスならではの価値をプラスして、どこまで金額を引き上げることができるのか。ちなみに、2011年にDeNAがベイスターズを買収した際の金額は65億円(67%)です。
大宮の3億円という買収金額は「安すぎる」という声もあがっていました。実際にはクラブの負債も引き継いでいるとのことで、投資額はもう少し多いものと思われますが、J2とはいえ首都圏のクラブについた値段としてはやはり破格と言わざるを得ません。
そのことを疑問を感じたのが、元Jリーグ常務理事でファジアーノ岡山のオーナーでもある木村正明氏です。木村氏は特任教授を務めている東京大学先端科学技術研究センターとの共同研究で、Jリーグクラブの企業価値を推定するための計算式を提唱しました。これには「売上高」「所属選手の市場価値」「SNSフォロワー数」がパラメーターとして組み込まれています。
論文では2種類のモデルによって計算が行われており、マリノスについてはモデル1が194億円、モデル2が43億円となりました。両社の差が大きくなっていますが、その理由はモデル1には「所属選手の市場価値」が含まれていないことによります。そのほうが高くなるということは、Jリーグの選手の価値はヨーロッパに比べてまだまだ低いことを意味します。
木村氏が今年出した著書『スポーツチームの経営・収入獲得マニュアル』では、最新の数字を使った算出結果が載っており、モデル1は282億円、モデル2は82.9億円となっています。モデル1,2ともに増加したのは、2022~23年にかけて好成績をあげたことが大きいと思われますが、それゆえに今季の低迷ぶりは実に残念です。
また、この本には「親企業の年間拠出金額」についても推定しており、マリノスは日産自動車およびグループ会社を含めて10億円強であるとしています。もし、日産がスポンサーからも撤退するのであれば、新たなオーナーは同程度の支出が必要となりますし、日産スタジアムのネーミングライツを引き継ぐのであればその分もプラスされます。
ただ、いわゆる「赤字補填」としての支出はなさそうだとも書かれています。つまり、広告宣伝費として説明のつく範囲に収まる金額ということです。新たなオーナーにとって、クラブの歴史と伝統を引き継ぐというのは重荷にもなりますが、それだけの価値のあるステータスと宣伝効果が得られるはずです。どこに、そしていくらで決着するのでしょうか。
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