ディズニー傘下のFubo、NBCと契約切れ。
もう、誰が味方で誰が敵なのか、よく分からなくなってきました。ディズニーとYouTube TVの紛争がようやく和解してからさほど日が経っていないにも関わらず、今度はNBCユニバーサルとFuboの契約が11月21日17時(米東部時間)をもって切れたのです。
これにより、NBC傘下のチャンネルがFuboから消えました。フットボールシーズンの真っ只中に、Sunday Night Footballが観られなくなったのです。
どんなチャンネルが観られなくなったかはFuboのリリースに載っていますが、結構たくさんあります。
ローカルのスポーツチャンネルが多いということもありますが、1年前に両社が協力して、いわゆるFASTと呼ばれる無料チャンネルを18個立ち上げています。これらも全部消えました。無料なら消さなくても・・・と思ってしまいますが、広告収入のレベニューシェアとかいろいろ複雑な問題があります。
Fuboは、YouTube TVなどと同じく、ネットを通じてマルチチャンネルを配信する業者(vMVPD)です。スポーツにも力を入れており、競合との差別化をはかっていました。
ディズニー・FOX・WBDの3社合弁によるストリーミング「Venu Sports」の計画が出たとき、Fuboは訴訟に打って出ました。差し止めの仮処分を得ることを成功し、後に3社と和解が成立。和解金を受け取っています。結果としてVenu Sportsは計画を断念しています。
しかし、この時「奥の手」が飛び出します。ディズニーがFuboを買収したのです。どうやらFuboの経営状態はあまりよくなかったようで、このまま大手に駆逐されるよりも、飲み込まれるほうを選択したことになります。
ディズニーに買収されたものの、ブランドとしては存続。同じディズニー傘下であるHulu + Live TVとは共存することになりました。Fuboはよりスポーツに特化した「Fubo Sports」を開始し、これもまたディズニー傘下の「ESPN Unlimited」をセットで提供しています。かつての敵を今度は味方に引き込み、再生を狙っていました。
そこに来て、今度はNBCとの摩擦です。これまでの同様の紛争と変わらず、金額が論点となります。Fuboの主張は、NBC側が「他社よりも著しく高い」条件を提示しているというものです。
ディズニーとYouTube TVの紛争では、MFN(最恵国待遇)と呼ばれる契約条件が注目されました。競合他社と同水準の条件を提供するというものです。両社のあいだにはMFNが存在しないものとみられますが、今回の紛争を通じてそれに近い条件をYouTube側が獲得できたものと考えられます。
FuboもまたMFNの恩恵を得ることができず、ディズニーらを相手取った訴訟ではこのことを争点にしていました。今度はディズニーの傘の中からMFNを主張しているのでしょうか。ディズニーはYouTube側の要求を蹴り続けてきましたが、今度はFuboが要求を蹴られるターンです。因果はめぐります。
NBCは、最近になっていったん閉鎖したスポーツチャンネル「NBCSN」を復活。最初の供給先としてYouTube TVと契約しています。今回の契約交渉を通じてNBCSNの供給も当然議論していたはず。FuboとしてはNBCSNを導入すると値上げは不可避であり、これ以上値上げすれば競合との差別化が難しくなります。
ディズニーに買収されても魂までは売ったつもりはありません。Hulu + Live TVに統合されるシナリオは是が非でも回避しないといけません。FuboとNBC、どっちの言い分が正しいのかは分かりませんが、ひとつ争いが起これば火の粉があちこちへと飛び散っていきます。とにかく必死です。
0コメント