オリンピック放映権料の変遷。1964東京はいくら?

東京五輪のマラソン・競歩が札幌開催に変更されたことに関連して、1964年の東京五輪のように10月開催にできなかったのか?といった声も聞こえてきます。

その理由としては放映権的な側面もありますし、トッププロ選手が参加できる時期といった事実をお伝えすることはできるのですが、その先は政治的な話になるためなんとも言いようがありません。

少なくとも言えるのは、放映権料の高騰はしばらく止まらないということ。米NBCは2032年まで契約済みですからね。また、1964年の頃に戻ることはあり得ないということです。
功罪はいろいろありますが、それだけオリンピックは巨大なイベントになりました。もはや自らを制御できない怪物になっているのかもしれませんが。
オリンピックにおけるスポンサーシップや放映権料の変遷についてはIOCが公表している「Olympic Marketing Fact File」という資料に記されています。検索すればすぐにPDFファイルがダウンロードできますのでぜひご一読を。

オリンピックに(テレビの)放映権という概念が生まれたのは1960ローマ大会です。この頃にVTRが実用化されたことが多くの国での中継を可能にしました。アメリカや日本にはビデオテープを空輸して放送していたそうです。

1964東京大会では衛星中継が実現しました。その前年に日米間の衛星中継が始まったこと、最初に届けられたのはケネディ大統領暗殺のニュースであったことはご存知の方も多いでしょう。
オリンピックがテレビで中継された国・地域の数はこの通り。1960ローマ大会から増加していったことが分かります。
ということで、まだまだテレビ中継は黎明期。放映権料なんてかわいいものです。1964東京大会をアメリカで中継したのは2020と同じNBCですが、支払ったのは「たった」100万ドルだったとのこと。

アメリカ・ヨーロッパ・日本の放映権料の変遷も紹介しておきます。こちらの資料はNHK放送文化研究所のレポート「いつまで続くか スポーツ放送権市場の巨大化」から引用しました。これもPDFで読めますのでぜひ。

よく1984ロサンゼルス大会がオリンピックを「商業主義」に歪めたきっかけとして批判されるのですが、実際のところそれでもまだかわいかったりするんですよね…。
ロサンゼルスの功罪についてはまた取り上げたいと思いますが、こと放映権に関して言えば、この大会から入札を導入したことがあげられます。ただ、入札自体はビジネスとして健全な手法であり、もっと複眼的に見ていく必要があるでしょう。

この後について補足すると、米NBCの放映権料は2014~2020年までの(冬季含む)4大会で合計43.8億ドル。2022~2032年までの6大会で合計76.5億ドルとなっています。

アスリートファーストと言うのは簡単ですが、そのためにはマネーも必要。たくさんのアスリートが食べていけることや、練習環境の整備も大切ですし、そのためには多くの人に競技を見てもらえることが欠かせません。

そこから先はやはり政治の話なのでどうにもコメントはできませんが、今回の件については遅きに失した感は否めないな…というのが正直なところですね。

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