自転車ロードレース界の危機表面化。もはや結束は無理?

スポーツイベント、とくにシリーズ化された一連の大会におけるステークホルダーとしては、大会主催者・参加チーム・選手・統括団体といったところがあげられますが、これらの利害が一致しないとしばしば対立が発生します。

自転車ロードレースにおける対立としては、ツール・ド・フランスなどを主催するASOと統括団体であるUCI(国際自転車競技連合)の対立が一時期激化しましたが、いまは一応落ち着いています。そして、今回表面化したのはチームの代表組織であるAIGCPとUCIです。
原文を読んでみましたが、“taxation without representation”(代表なき課税)という表現はなかなか強烈。“No taxation without representation”(代表なくして課税なし)はアメリカ独立戦争における有名なフレーズであり、これを引用したことの意味は大きいです。

結局のところUCIは統括団体としての責任を果たしてない。それはガバナンスの問題であり、またレースに参加するチームや選手たちに充分な待遇を保証できないビジネスの問題でもあります。

第1回近代オリンピックから採用されている自転車競技はその伝統ゆえに全体を統括するのが難しい。ツール・ド・フランスに限らず100年以上の歴史を持つレースがごろごろしているロードレースの世界をまとめていくのは至難の業であることは理解しつつも、伝統にあぐらをかく組織は確実に堕落します。
UCIからのお返事も届きましたが、ここ2年間で行ってきた改善を列挙するとともに、AIGCPに対するあからさまな不信を表明しており、こりゃ収拾つかんな、というムードがぷんぷんしております。

このままだとシリーズ分裂か?その場合、既存のレース主催者はどっちにつくのか?といった見方もあるでしょうが、主催者の中でもASOの力が強くてバランスを欠いた状態であり、二者の対立が三つ巴になるだけのような気もします。カオスですな。
権力争いというのは多くは利権の争いであって、要はロードレース全体がもっと潤うことがひとつの解決策とも言えます。この事件はかねてから問題視されているビジネスモデルの脆弱さが改めてクローズアップされたものと言ってよいでしょう。

プロスポーツの主な収入源は観客収入、スポンサー収入、放映権収入。ロードレースは公道を舞台にするため観客収入は得られず、放映権料はチームに分配されないため、チームの収入の大半はスポンサーに依存します。財政基盤がとても脆弱なのです。

この問題に対する特効薬は存在しません。現在あちこちで試されているさまざまな取り組みの中から、効果があったものをピックアップしていくしかないでしょう。もちろん放映権料のアップは重要なテーマですが、それを最終的に負担するのは我々視聴者です。

我々がJSPORTSやDAZNなどに支払っているお金が一部の権力者のみを潤し、チームや選手に還元されないのであればそれは悲しいことです。

エコなイメージからサイクリングへの関心は高まっておりますが、それをうまくマネーに変えていくこと。そしてそのマネーを適切に配分していくことが求められます。それが叶わなければ、現在のファンもやがて離れていくことになるのでしょう。

この話題については論点がいろいろとありますので、また折に触れて取り上げていきたいと思います。

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