【反省会②】Netflixが欧州CL放映権獲得との誤報検証。
引き続き反省会です。これもDAZNの騒動とタイミングが重なったことで、本来のニュースバリューを超えて火がついてしまった形です。
流れた噂は、Netflixが欧州CLとリーグ・アンの放映権を獲得したというものですが、検証した結果、いろんな意味で間違っていました。
発端となった記事はスペインのスポーツ紙「マルカ」のもので、フランスの「レキップ」の記事に基づいた形で書かれていました。しかし、当のレキップの記事や、他のメディアの記事を参照する限り、そのような事実は確認できませんでした。
■「レキップ」に書かれていたこと
来季からのリーグ・アンの放映権を獲得したスペインの代理店・Mediaproは、フランスの放送局・TF1との合弁で新たに「Telefoot」というチャンネルを立ち上げます。
Telefootは加入促進のためにNetflixと提携し、セット割引のキャンペーンを実施すると発表しました。つまり、Netflixで試合が配信されるわけではありません。
また、Telefootは来季のCLを放送(配信)する通信サービス・SFRとの提携も発表しており、ひとつのプラットフォームでリーグ・アンもCLも視聴できるようになります。この話とNetflixは無関係です。
■「マルカ」に書かれていたこと
リーグ・アンにおけるNetflixとの提携話を、Netflixが放映権を獲得したと誤って報道していました。見出しからして"Football arrives on Netflix"なのです。堂々としてます。
CLに関する記述には誤りはないのですが、先のリーグ・アンに引きずられ、CLもNetflixで配信されるとミスリードを誘発するものとなっていました。
移籍話などのゴシップはスポーツ紙に付き物ですが、これはゴシップとは違うのですからきちんとして頂きたい。もちろん読む側の意識も問われます。
■放映権は基本的に国単位である
この原則を忘れてはいけません。もしこれらの報道が正しかったとしても、フランス国内での話なのです。
なので日本とは無関係なのですが、ちょうどDAZNが騒がれていたタイミングと重なったことで、日本でもNetflixがCLを配信するといった尾ひれがついてしまいました。
Netflixといえばグローバルというイメージが出来上がっているがゆえとも言えますが、UEFAから権利をグローバルで購入するのは現実的に無理な話です。
■ライブ配信に手を出さないNetflixの戦略
Netflixはこれまでライブ配信に興味を示してきませんでした。ここ数年で注力しているのはオリジナルコンテンツの拡充であり、その制作費は年間2兆円に迫るとんでもない規模です。
オリジナルコンテンツは自ら著作権を持つことができ、かつグローバルに展開することができます。それとは対照的に、スポーツのライブ配信は国という縛りに制約され、著作権も得られません。また、全世界からのトラフィックが集中することのリスクも考えられます。
ですから、Netflixがライブ配信に参入することとなれば、それは大きな方針転換であり、スポーツの枠を越えてビジネス系のメディアで広く報じられることとなるでしょう。
DAZNを「スポーツ版Netflix」と称する向きもありますが、サブスクリプションという共通点以外は大きくビジネスモデルが異なるのです。もちろんDAZNもオリジナルコンテンツの開発を進めていますが、ESPNやRed Bullのように、新たなエクストリームスポーツを開発するくらいの動きが求められます。
■所感
Netflix待望論はわからないでもありません。スポーツの放映権ビジネスは旧態依然としており、それを変革できるとするならばNetflixのような資金力のある異業種なのかもしれません。
今回は誤報という検証結果でしたが、一寸先は闇。何が起こるか分かりません。コロナ禍によってスポーツ系は被害を被り、エンタメ系は恩恵を受けました。ジャンルを越えた再編劇も充分起こり得ます。
でも、ひとつの誤報にいろいろと尾ひれがついて広まっていく過程をリアルタイムで目撃できたのは貴重な体験だったと個人的には思っています。
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